第4回甲南大学西洋史研究会開催

2024年3月18日(月)14:00~18:00、歴史文化ラボラトリで、第4回甲南大学西洋史研究会が開催されました。今回は、林孝洋先生(「西洋史研究」担当)に、「向こう岸からのリソルジメント―亡命者の脱神話化と社会史への注目―」と題する報告をいただいた後、阿久根晋先生(「文化交流史」担当)にコメントをいただきました。「亡命者」としてくくられてきた人々の固定的なイメージを、社会史的手法を用いて、生活世界の実像から見直す刺激的な報告をめぐって、学生からも多くの質問がだされ、活発な議論が展開されました。続いて、他大学大学院への進学を決めている村田愛誠氏は、卒論をベースとした「「統治する女王」1830年代~1870年代―女性運動におけるヴィクトリア女王の表象―」という報告を行い、これまでの成果と今後の課題を確認しました。また、今回の研究会では、「他大学の大学院でどう学ぶか」についても話し合いました。この面で多様な経験を持つ先生方に質問しながら、大学院進学の方法、進学先での学び方、その楽しさと難しさについて、話し合うことができました。近年、本学科からも国公立の大学院へ進学する人が増えています。学部での学びをさらに深めようとする人が増えていることは、学科の知の活性化という点で喜ばしいことです。(教員・高田 実)

2023年度卒業論文・畑匡洋(鳴海ゼミ):兵器を伴う忠魂碑の景観形成

本論では「兵器を伴う忠魂碑の景観」を研究対象として、その景観に関係する史料群から景観作成の社会システムと広がりを明らかにすることを目的とした。はじめに本論で使用した「忠魂碑と兵器」の史料群の史料論的視角からの考察、そしてこの景観に使用される兵器が処分される兵器=「廃兵器」であることを明らかにした。次にこの史料群の考察を基に、廃兵器が忠魂碑に備え付けられていく時の地域社会や海軍機関の働きやその実際のプロセスを明らかにした。この景観が出来上がり広がっていく要因として、社会制度面での忠魂碑と廃兵器の関係性、在郷軍人会の働き、効率的で合理的な仕組みの社会システムの構築、が背景にあったことを指摘した。なお、本論は「兵器を伴う忠魂碑の景観作成」の前提知識・条件として位置づけられる。

忠魂碑:「忠魂碑」意賀美神社・大阪府枚方市 1928(昭和3)年 11 月建立 筆者撮影(2023.11.8)
史料:「廃兵器無償下付の件 40 口径 12 糎1号徹甲弾 10 個」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C04016346800、公文備考 兵器7止 巻 92(防衛省防衛研究所)

2023年度卒業論文・山城文乃(中町ゼミ):イランのアジール—ゴム市におけるバスト慣習について

イランにおける聖域避難の慣習「バスト」を、ハズラテ・マースーメ廟擁する聖地ゴムに限定することで、時代ごとの姿を明らかにし、また都市の発展と関連づけて考察した。慣習は古く13世紀イルハン朝期にその事例が史料上に見られ、その後もカージャール朝の時代までは確実に引き継がれていた。避難を成立させる聖域の不可侵性はイラン地域を支配した歴代の王朝に認知され、またシーア派聖地として聖廟を含め、ゴム市には多大な後援が行われた。これを背景とする都市の発展とバスト慣習の継続及び流行は相互作用していたと論ずる。

シャルダンの見たゴム(シャルダン『ペルシア紀行』岩波書店1993年より)

第4回「歴史総合・地理総合」研究会開催

2024年2月25日(日)、6‐34教室において、第4回「歴史総合・地理総合」研究会が開催されました。今回は近隣の高校の先生方にも案内をお送りし、計20名ほどの方々にお集まりいただきました。今回は、北村厚先生(神戸学院大学人文学部)のご著書『大学の先生と学ぶ はじめての歴史総合』(KADOKAWA,2023年)を素材として、井上翔太先生(クラーク記念国際高校芦屋校)と教職をめざす2人の学生(木嶋悟詞・河内琉嘉)のコメント、北村先生の応答、参加者相互の討論を通じて、歴史総合の学び方・教え方について考えました。この本には、「問い」を軸とする歴史総合の学び方がわかりやすく書かれており、より具体的な形でこの科目のねらいと今後の課題を理解することができました。また、学外からの参加者が増えたことも大きな成果でした。今後、地歴教育における中高連携の課題も積極的にとりあげて、研究会のさらなる充実をはかってまいります。(教員・高田 実)

新見ゼミ、奈良巡検

私たち新見ゼミは、2024年1月13日に奈良公園周辺でゼミ巡検を行いました。新見ゼミはアジア史を研究対象とする人が多いですが、この巡検では奈良公園・興福寺・奈良国立博物館・春日大社・東大寺など、日本の歴史を眺めることができる建物を多く見学し、普段とは違った分野に触れることができました。特に、奈良国立博物館で見た絵画の中に鹿がたくさん描かれていて、古くから鹿が人々にとって身近で大切な存在であったことを、身に染みて感じることができました。また、観光に訪れている人はほとんどが外国の方で、世界的に見てもこんなに近い距離で鹿と触れ合える場は貴重なのだなと感じました。 今回の巡検は、現在まで残っている日本の歴史的な文化財や建物を直接見学することができ、日本史についての学びを深める機会になりました。(2回生・堀内空弥)

フィールドワーク@生野銀山

 2023年12月10日、基礎演習IIの授業の一環として、生野銀山でのフィールドワークを実施しました。当日は1年生52名が参加し、ガイドの方の案内を聞きながら、博物館の展示を鑑賞したり、坑道の中に入って遺構や遺物を実見したりしました。坑道内は年間を通して気温が13℃程度で、「狸掘り」という手作業の掘り方では、人がやっと通れる程度の穴を一日15センチずつ、這いながら堀り進めたとか。想像以上の寒さと狭さに、驚いた学生が多かったです。学生から寄せられたコメントをいくつか紹介します。

  • 今までずっと普通に立って掘削していると思っていたが、鉱石を運ぶためのトロッコが通るスペースが大事で、人の方は通ることができればいいと言わんばかりの細さでとても驚いた。
  • この場所で働いていた人がいて、手作業で掘った人たちがいるということを肌で感じられて良かった。今は機械でなんでもできてしまうが、室町時代から人力で掘り続けてきた人の情熱を感じました。また、掘り方が初めは上から下に掘るものだったのが、機械の進化に伴い下から上に掘って石を効率よく回収する方法になったと知って驚いた。
  • 現在は、坑道の内と外との気温差を利用して、坑道内にサツマイモやカボチャ、酒が貯蔵されていた。過去の遺跡だと思っていた銀山が今も活用されていることに驚かされた。
  • 生野銀山を実際に訪れて、イメージと実態のギャップが大きいとわかったため、フィールドワークに行くのは大切なことだと考えた。

 コロナ禍も収まり、ゼミ巡検などで色々なところに行けるようになりました。今後も、このような機会を定期的に作っていきたいです。(教員:新見まどか)

博物館実習ⅠAの学外講義(竹中大工道具館と北野異人館界隈重伝建地区)

2023年12月16日、私たちは博物館学芸員養成課程の博物館実習ⅠAの授業の一環として、神戸市の竹中大工道具館を見学しました。竹中大工道具館は、大工道具を展示する日本唯一の博物館であり、まずその圧倒的な大工道具の数に驚きました。棟梁の知恵の数々に感心し、日本の道具の面白さを楽しく学ぶことが出来ました。建物自体も木造建築風となっており、伝統や現代の建築技術を肌で感じられる素晴らしい空間でした。午後からは地図を片手に、有志のメンバーで北野異人館界隈の重伝建地区を巡りました。普段あまり行かないようなところまで足を運ぶと、数多の洋風の伝統的建造物が並んでいました。保存地区の建造物が実際に活用されている様子を確認でき、そのまちづくりに感心しました。実際に足を運び、自分の目で見ると驚きと発見の連続で、とても有意義な時間を過ごすことが出来たと思います。(2回生・伊場田扶弥)

入学前ガイダンス

2023年12月16日、鳴海ゼミ生の私は、来春入学予定の年内入試合格者向けイベントである「入学前ガイダンス」に参加しました。ガイダンス後半では、佐藤・中町・鳴海ゼミ生の3人が歴史文化学科の魅力を三者三様の視点でプレゼンしました。留学生として体験、学科の学びや「歴らぼ」の活動、教職資格の紹介など、大学生活の魅力が伝わるプレゼンであったと思います。プレゼン後は、新入生を3グループに分けて交流会を催しました。緊張したり、積極的に質問したりと様々な様子でしたが、みんな充実した表情であったのが印象的で、これから始まる学びのスタートラインに関われたことが嬉しく思いました。新入生のみなさん、良い大学生活となるよう願っています。(3回生・勝田 颯斗)

歴かふぇ16・今松泰先生

2023年12月5日、第16回歴かふぇでは、「歴史と思想」の授業を担当される今松泰先生より、スーフィズムや聖者信仰についての簡単な説明から、バルカン調査旅行のお話を、聖者信仰の対象となった墓廟などの写真を交えつつお話し頂きました。イスラームは絶対的な一神教で硬いイメージが持たれることの多い印象でしたが、今回はそんなイメージを覆すようなお話が多く、むしろ私たち日本人の信仰に似たものがたくさん出てきました。イスラームを象徴する文化とも言えるこの信仰に興味を持って、生徒からたくさん質問が投げかけられたのが印象的でした。(2回生・高尾小雪)