20世紀前半の女子就学者は、学校外での学習で、音楽などの「たしなみ」を身につけることに力を入れていた。それは女子の「幸せな」結婚生活のためであった。近代家族の女子の役割の1つは、一家団欒に寄与することであった。音楽は、家族の娯楽、夫との趣味の一致、婦女自身の慰みになり、家内和睦に繋がる。また、楽器を習うことはお金がかかるため、教育にお金をかけているとアピールすることに繋がる。それは女子のイメージとして抜群で、音楽のたしなみを身につけることは花嫁稼業とされていた。 女子の幸せ=結婚だったこの時代、女子本人はともかく、親も自分の娘にふさわしい、あわよくばワンランク上の結婚相手を期待していた。同じ学歴ならば、高い相続文化をもつ女性の方が配偶者の経済力が高くなることが社会学で証明されている。たしなみは婚姻を通じて経済力、そして幸せに変換されていたのである。