甲南人の軌跡Ⅰ/廣瀬 英太/ともに未来をつくるみなさんへ | 卒業生の活躍紹介サイト | 甲南大学

ともに未来をつくるみなさんへ

廣瀬 英太

Hirose Eita

豊田通商株式会社勤務

2006年 経済学部 EBA総合コース卒

趣味・特技

スキー、楽器、 旅行(食or海)

好きな⾔葉

志士仁人 / 好奇心 / 明るく楽しく元気よく

学⽣時代のクラブ・サークル

フォークソング同好会

道を拓く(学生時代)

 私は、2001年に甲南高校から経営学部に内部推薦入学しましたが、翌年2002年に「EBA(Economic & Business Administration)総合コース(以下、EBA)」の1期生として、外部受験を経て甲南大学に再入学しました。18歳当時の私の脳裏にあった想いは、「将来商売に役立つ学問を学びたい」「海外への道を拓きたい」という漠然としたものでしたが、まだ形が見えない新しい学科コースへの期待と不安を抱えつつ入学しました。

 1学年35名という少人数のコースで、他の同級生より1年先に大学生活を経験していた私は、みんなを連れ回したり(されたり)、教室や自宅で同級生に補習授業を行ったり、教職員から温かく(も厳しく)見守られ、家族といるような時を過ごしました。また、同コースでは、アメリカ留学での専門科目の単位取得が必須であったことから、実践的な語学力が足りない私を支え、助けてくれたのも同じ仲間であり、先生方でした。今でも時折、西宮CUBEキャンパスを訪れる機会がありますが、この「面倒見」のよい文化やDNAが、どこかで根づいていることを耳にするたび、胸にこみ上げるものを感じます。

 就活では、早い段階から商社を希望しました。3年生の夏休みには地元神戸の商社・富士インダストリーズ株式会社にインターン生として受け入れていただき、3週間の事業企画案(稚拙でした…)をつくる研修をとおして、社員の方と同じデスクで働かせていただいたことが、とても楽しく、印象に残っています。

 OB・OG訪問も商社を中心としながらも、商社以外の業界の方とも積極的に会いました。その際、私が必ず質問したのは、「会社は(仕事は)楽しいですか?」ということでした。仕事内容や人間関係、その充実の度合いに触れることにより、先輩方から会社の魅力を伺い知ることができると思ったからです。

 また、商社を希望する戦友と過ごした時間は忘れられません。彼らとは筆記試験や面接内容の情報を共有し合い、OB訪問をともにし、お互いを励まし合い、就活を走り抜けました。お世話になった大学への恩返しとして、戦友とともに立ち上げた就活支援サークルOBF(Of the Student, By the Student, For the Student)も今は活動が先細っているようですが、十数年経った今でも、国内外で再会しては、現在の仕事や将来への想いを語り合います。私が学生時代に得たものは、「道なき道を拓き進み、そこに道ができていく感覚」です。冒頭に述べた「漠然とした想い」は、無意識のうちに信じて進むことで時間とともに形を成していきました。働く今だからこそ、これが大事だったと改めて思います(社会に出ても大事にできる想いの素地が造られました)。

道を拓く(社会人)

 私が勤める豊田通商株式会社(以下、豊通)との出会いは、ネットワークキャンパス東京に当時顧問として在籍されていた神田氏をとおして、甲南OBである豊通の大先輩を紹介いただいたことが契機でした。海外で活躍したい、また日本企業で働く日本人として、世界に胸を張れる仕組みをつくりたいという、漠然とした気持ちで商社を志望し、幸いにも同社から内定をいただくこととなりました。

 入社から3年は下積みの仕事で、自動車部品の北米輸出で商社の基本となるデリバリー業務を担当しました。4年目以降は部品軸の仕事を担当し、新規事業開拓として、航空機産業への新規参入を目論み、航空機部品メーカーに1年半、および機体メーカーへ2年、それぞれ出向しました。このとき手がけた仕事は、現在、当社の航空機部材輸入と物流サービス、それに合弁事業として形ができてきています。

 入社10年目に初めて海外(マレーシア)赴任となり、3年半が経ちました。現在はマレーシアのトヨタ自動車(車両組付会社のAssemblyService社)に出向中で、調達部・工務部のコーディネーターとして、同国で2つ目となる新工場の立ち上げ、また新たに生産が始まる車両のローカル部品調達と日系部品メーカーとの折衝を担当しています。

 入社後3社目の出向となり、豊通のなかでは少し異色なキャリアを歩んでいますが、初めは本社を離れることが不安でなりませんでした。というのも、豊通の看板を背負うことに対する不安、出向先の期待の大きさ、また商社への印象(仲介取引的な存在)、自身の出向後に何を残せるのかという不安があったからです。

 今、私が心がけていることは、「商社(社外)から来た自分だからこそできることをやる」ということです。仕事柄、メーカー出向が主ですが、各社共通することは(偶然かもしれませんが)、「部門間に垣根がある」ということです。部門ごとに役割や担当が鮮明に分かれているため、効率よく業務が回り、責任区分が明確です。他方で、新しいことを進める際、誰がやるか、どう進めるか等、どこかで詰まってしまいます。業務改善でも新事業案でも「一風変わったことにチャレンジ」してみる提案を持ちかけられる存在でありながら、豊通の持つ機能やノウハウを活用してもらい、出向先にとって新しい道を見出してもらえる役割を担うことを心がけています。結果として、それが新たな事業になることが、私自身の理想であり目標です。

 豊通へ入社して13年あまりが経ちました。将来何があるかわかりません(次の出向先でみなさんにお会いするかもしれません)が、今は会社や人を想い、繋いでいく当社への感謝と、社会やお客様に貢献したい気持ちを入社時よりも強く持っています。

学生も社会人も本質は同じ「人」

 社会人13年目、いまだ未熟ゆえ僭越ですが、心構えの面で思うこと(自戒も含めて)を述べていきます。

「礼節を知ること」

 みなさんは、初対面の方にどんな印象を与えたいですか?礼節ある振る舞いや行動は人をつくるといいますが、あたり前のようで大変難しいことです。しかし、だからこそやりがいがあります。その方法やスタイルは、基本があれば(場を読んだうえで)崩すことも構わないと思いますが、日本人・社会人・甲南人としてどのような場においても「世界に通用する紳士淑女たる」ために、まずは、人としての入口である礼節を大切にしたいと私は思います。就活は社会に出るための実践訓練の場です。場数を踏んで強くなってください。

「現実を知ること」

 みなさんの周りで今どんなことが起きていますか?目の前や自分の周りで起きている事象をどれだけ早く、正しく捉えられていますか?

 仕事でたとえれば、「この事業を提案することは、対象となる業界やお客様のなかで今現在起きていることに対して、正しい(先を見据えた)解決策や道筋つくりになり得るだろうか?」ということです。

 就活においては、周囲の学生の動き、面接官の期待値、企業や業界の動向、景況や時節まで、知ることに百利あって一害もありません。みなさんへの勧めとして、書物や人の言葉をとおして物ごとを貪欲に吸収し、知識を養い、嗅覚とアンテナの感度を磨いてください。きっと新しい視野が拓けるはずです。

「自分を知ること」

 自分は今どのような人間で、何がしたいか?将来どのようになりたいか?私は、この難解で心の筋トレのような質問について、今も自らに問い続けています。

 明快な解を持つ人もいますが、私自身は時とともに具体的になりつつも、いまだ抽象的で形や色が微妙に変化しています。ただし、初心は忘れず、積み重ねてきた過去に素直に、失敗や足らぬことには謙虚に、自分に正直に、そして一握りの「根拠のない自信」を持つよう、私は心がけています。大事なことは自分自身から決して逃げないで追求し続け、転んでも必ず立ち上がることです。困難や思いどおりにならないことは多々ありますが、それでも前を向いて進む、絶対に折れない気概を持って社会に出てきてください。

 最後に、「明るく楽しく元気よく」している人は、社会や会社でもひと際、輝いています。苦労をとって笑顔を忘れず、いつかどこかで甲南生らしい笑顔のみなさんに会える日を楽しみにしています。

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