甲南人の軌跡Ⅰ/北條 聡子/意志あるところに道は開ける | 卒業生の活躍紹介サイト | 甲南大学

意志あるところに道は開ける

北條 聡子

Hojo Satoko

サクセスカナダ留学センター
(カナダ・カルガリー)勤務

2000年 文学部英語英米文学科卒

趣味・特技

剣道、セイリング、 ハイキング等 アウトドアスポーツ

好きな⾔葉

Where there's a will, there's a way (意志あるところに 道は開ける)

学⽣時代のクラブ・サークル

ESS(英語クラブ / スピーチセクション)

人生の基盤となった交換留学

 高校生の頃から英語が好きだったため、大学時代は英語クラブに所属することにしました。英語でのディスカッションやスピーチ大会などに積極的に参加し、英語に触れる機会を多く持つよう心がけました。そのうち、英語圏で生の英語に触れ、海外の大学で勉強したいと思うようになり、大学4年生のときに1年間、甲南大学の交換留学プログラムを利用し、カナダのビクトリア大学へ留学することを決めました。周りの友だちは就職活動を始め、将来の進路決定をしていくなか、海外へ留学し1年遅れで卒業することに対する不安や焦りもありましたが、同時に、留学を自分の人生に活かせる最高のチャンスだと考え、不安を勇気と希望に変え、カナダへ出発しました。

 カナダへの渡航後は、英語がまったく通じず、カナダ人の学生たちと受講する大学の講義もほとんど理解できなかったため、毎回講義を録音し、夜遅くまで何度も聞き直しては、悔しく、もどかしい思いをする日々でした。

 また、ホームステイ先でも、言葉や文化の違いから誤解が生じ、生活面でもなかなか落ち着かず、ホームシックにも陥りました。そんなときに、甲南大学から一緒に交換留学に参加していた友だちや、現地で知り合ったカナダ人の友人たちが励ましてくれ、徐々に新しい環境にも慣れていくことができました。

 カナダ人のなかには、日本に興味を持っている人も多く、日本の文化や歴史、政治、経済などについても、よく質問されました。その際に、説明するのに必要な英語力の乏しさだけではなく、自国についての知識や理解が少ないことを痛感し、日本に関する質問に答えることができない自分を恥ずかしく思うことが多々ありました。こうした苦い経験を機に、日本について、また自分自身についても深く考える機会を持つことができたのは、留学における大きな成果であったと思います。

 また、カナダの原住民の生活や文化などにも興味があったため、原住民が主催するイベントのボランティア活動などにも参加し、カナダの歴史や文化にも触れることができました。カナダ人はボランティア精神が旺盛で、こうしたイベントのサポート等はもちろん、日常生活でも、他人のことを自分のことのように思い、さまざまな場面で助け合って生活をしていることが大変印象的でした。 世界各国からの移民が集まるカナダで留学を経験し、それぞれの異なる価値観を尊重しながら生活している姿に触れ、自分自身の視野を大きく広げることができ、また、さまざまなことに積極的に挑戦する姿勢を身につけることができました。留学を終える頃には、将来の目標もしっかりと定まり、貴重な1年間の留学経験が、私の人生を豊かにしていく基盤になったことは確実です。

夢の実現と新たなチャレンジ

 中学生のときに、素晴らしい先生に出会うことができ、将来は人の成長に携わる仕事がしたいと考えていました。そのため、大学卒業後は公立中学校に英語教諭として就職しました。夢であった教員生活が始まり、最初は無我夢中で授業やクラス運営を行う日々でしたが、大学を卒業したての若い身で「先生、先生」と呼ばれるようになったことで、人生経験が浅いにもかかわらず、どこか驕った態度に変わっていくことに違和感を覚えました。そんななか、「先生」と呼ばれるには、もっと人生経験を積み、子どもたちに胸を張って伝えることができるようになってから教壇に立ちたいと思い始め、念願の教職に就いたばかりでしたが、2年後には退職することを決めました。

 その後、英語教師としての語学力の向上と経験を積むために、再度カナダへ渡航し、語学学校でスクールカウンセラーとして働くことになりました。語学学校に勤務するなかで、私にできることは何かを考えていくうちに、大学時代の留学経験を活かし、人の役に立ちたいと強く思うようになりました。そして、2003年に、海外からの留学生のサポート全般を行う留学会社をカナダ・カルガリー市に設立し、主に日本からの留学生を支援する業務に励みました。会社というより、留学生が放課後に集まり、日々の悩みや感動したことなどを共有し、互いに勇気づけ、発奮する場にしたいというのが一番の思いであったため、オフィス内はいつもたくさんの留学生が集まり、人と人とのつながりを生む、活気あるスペースになりました。

 私自身も留学していたときに、学校やホームステイ先で多くの苦労や悩みがあったため、留学生の思いや葛藤に共感し、留学生とともに悩み、喜びながら成長していく関係を長年築くことができました。今年で創立15年になりますが、今でもカナダで留学を経験された方々が、カルガリーを訪問してくれたり、便りをくれたりしています。この仕事を通じて、私自身の大きな成長にも繋げてくれた、1つひとつの貴重な出会いに感謝の気持ちでいっぱいです。

 今春からは、15年ぶりに日本に戻り、公立小学校で英語を教える仕事に従事しています。今後は、生きた英語と、カナダでの15年間の海外生活の経験を活かし、日本の教育現場で子どもたちの成長に携わる仕事ができればと思っています。教育は人格形成に大きな影響を与えます。教科書からだけではなく、実体験をもとにして、さまざまな分野の話を広く深く子どもたちと語り合える教師になることが、これからの私の目標であり、新しいチャレンジです。

感謝の心と「今」を大切に!

 人生の岐路や困難に直面したとき、私は常に「しない後悔」だけはすることがないようにと考えています。後になって、「やはりあのときにこうしていたらよかったな」という後悔だけはしないよう、大切なことを決めるときには、心の声に耳を澄ませ、周りの意見も聞き入れながら決断をしてきました。そして、一度決意したことは、最後まで諦めずにやり遂げることを大切にしてきました。後から「こうしていればよかったな」という後悔をしないためには、常にさまざまなことに興味・関心を持ち、新しいことに積極的に挑戦するとともに、多くの人と対話を重ねることで、自分の意思や意見を持つことが大事だと思います。

 大学時代は、学問を深めることはもちろんですが、友人と語り合ったり、興味のあることに熱中したり、「今」しかできないことに真剣に取り組むことが大切です。学生時代にはたっぷり時間があるはずです。それを最大限に活用し、さまざまな場で自分らしく輝くことができる自分磨きの時間として、後輩のみなさんには、一日一日を大切に過ごしてほしいと思います。

 また、私自身、とくに大学時代には、夢や希望、目標などを家族や友人に伝え、語り合うことで、叱咤激励され、前へ前へと進み続けることができました。大学を卒業して間もなくは、自分の力で人生を切り拓いているという自負がありましたが、今の充実した人生があるのは、振り返ってみると、留学や海外就職に反対せずに背中を押してくれた家族の深い理解と愛情があったおかげです。甲南大学のみなさんも、これから自分の意思でさまざまなことを選択し、実行していく場面が増えてくると思います。どんなときも、必ず周りの人がサポートをしてくれていることに感謝する気持ちを忘れずに、自分の力を信じて前進してほしいと切に願います。

 最後に、甲南大学で、人生に大きく影響する留学経験の場を与えてもらえたこと、また大学の講義をとおしてグローバルな視野を持つことができるようになったこと、これらすべてが今の私の人生に活かされています。甲南大学で貴重な時間を過ごせたことに、深く感謝しています。

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