甲南人の軌跡Ⅰ/堀 浩之/甲南あっての私 | 卒業生の活躍紹介サイト | 甲南大学

甲南あっての私

堀 浩之

Hori Hiroyuki

株式会社メタルワン 勤務

2009年 経営学部 EBA総合コース卒

趣味・特技

ゴルフ、ラグビー、食べ歩き

好きな⾔葉

自由闊達

学⽣時代のクラブ・サークル

体育会ラグビー部

「文武両道」

 私は学生時代、主に部活と留学に励みました。ラグビーは9歳から続けていたのですが、学部のプログラムで留学を予定していたこともあって、大学入学時には体育会に所属しませんでした。ラグビー以外にも触れるよい機会だと思い、ラグビーとは距離を置こうと考えていました。しかし、今さら他のスポーツができるわけもなく、また、チームメイトや先輩に熱心に誘ってもらったこともあり、結局入部することに決めました。途中留学で1年不在にするにもかかわらず、受け入れてくれたチームには非常に感謝しています。

 部活動に励む一方、留学の準備にも追われました。TOEFLで一定の点数をとれなければ留学に行けません。また、現地校で受けられる授業の選択肢が狭まるため、周囲には留学経験のある学生が多いなか、みんなに食らいつくように毎日勉強しました。留学中は現地校でもラグビー部に入部し、チームメイトとの親睦を深めました。勉強したとはいえ、こちらはまだまだ片言英語。始めは相手の言葉が聞き取れず、コミュニケーションをとるのに苦労しましたが、一緒に練習や試合をプレーするにつれ、私の拙い英語を理解してもらえるようになり、徐々にチームに溶け込んでいきました。アメリカ人グループのなかにいても、日本の部活と同じような居心地のよさを感じ、改めてスポーツは世界共通であると再認識し、ラグビーの偉大さを感じました。

 帰国後はラグビー部に戻り、練習や試合で毎日汗を流す一方、徐々に就職活動にも備え始めました。せっかく留学したので、海外で活躍できる仕事がしたいと思い、また、留学で日本のよさや、人との縁の大切さを感じたことから、商社に興味を持ちました。商社に就職された多数の先輩方を訪問し、自分が漠然と想像するやりたいことのイメージを具体化させ、面接に挑みました。最終的に運よく現在の会社から内定をいただき、最後の1年は部活に集中することができました。

 秋から始まるリーグ戦の終盤に、闘病していた母親の病状が悪化して他界した際には、練習を何度か休まざるをえませんでしたが、チームメンバーやコーチがサポートしてくれたので、なんとか試合にも出続けることができました。リーグ戦の結果は満足したものではありませんでしたが、最後までやりきれたことは今でも自分の宝になっています。

 甲南大学の4年間では、部活や学校の仲間、教師の方々との交流に恵まれました。自分がやりたいことができる環境があったからこそ、今の自分があると思っています。

「縁」

 私が現在働いているメタルワンという会社と出会ったのは、ちょっとした偶然からでした。大学2回生のとき、OBFという就活支援団体に所属していた同じ学部の先輩から、「会社の人事の方を招いて就活のアドバイスをいただくイベントを企画しているが、就活生の人数が足りないので来てくれ」と頼まれ、まだ就活時期でもないのに(ほぼ強制的に)参加することになりました。

 そのイベントには、2社から人事担当の方が招待されており、そのうちの1社がメタルワンでした。初めて名前を耳にする会社名であり、何をしている企業なのだろうといろいろ聞いてみたところ、鉄を扱う専門商社でグローバルに活躍しており、規模も業界内でトップであるということを知りました。また、三菱商事・双日(旧日商岩井)という伝統的な総合商社の合弁会社でありながら、会社設立から間もないため、企業風土もこれからのメタルワン社員がつくっていくというポジティブな話を伺い、非常に興味を持ちました。

 その後、留学の間も人事の方と定期的に連絡をとったり、帰国後は他の社員の方や、会社説明会、甲南OBで実際に働いている方々を訪問しているうちに、「この会社で出会ったみなさんと一緒に働いてみたい」という思いが強くなりました。その後、メタルワンを含む数社から内定をいただきましたが、「この会社と出会い、働く機会をいただいたのも何かの縁だ!」と思い、就職を決めました。

 配属は東京で、ブリキと呼ばれる缶詰や王冠用の鉄を、北中南米を中心に日本から輸出していました。輸出営業のみならず、事業投資管理も担当し、いろいろなことを新人に任せてくれる会社だなと当時は感じました。夜遅くまで働く日もありましたが、やりがいを持って案件に取り組みました。すると、働き始めて2年半が過ぎた頃、「まだ正式に決まっていないが、アメリカで働く気はあるか?」と上司から聞かれました。海外駐在が将来キャリアの希望だったので、即答で「是非行きたいです」と答え、入社4年目の春からアメリカのシカゴで働くことになりました。

 アメリカでは、建材、自動車、家電等に使われる薄板と呼ばれる鉄をアメリカ国内で販売しています。アメリカ人の顧客とは輸出時に会話したことがあったので、コミュニケーションには少し自信もありましたが、今までいかにうわべの会話しかしていなかったかを思い知らされました。以前は挨拶や簡単な会話だけで済んでいましたが、長く付き合う顧客とは、会話から相手が何を必要としているかを聞き出し、それらに応えていく必要があります。商社の仕事は単純な物の売買では成り立たず、αの付加価値を提供しなければ、お客様は振り向いてくれません。ミーティングや会食のみならず、時にはゴルフやスポーツ観戦等のエンターテインメントも必要です。お客様に納得いただき、メタルワンからの鉄の購買を決めていただいたときは、何ものにも代えがたい達成感を得ることができます。 アメリカは先進国のなかでも安定した成長を続けており、今や鉄鋼業界もブームとなっています。このようなチャレンジングな環境を与えていただいた会社には非常に感謝しており、会社との縁をこれからも大切にしなければと思う次第です。

「決断」

 学生のみなさんは自分の将来について、不安なことがたくさんあると思います。なかでも就職は、人生の岐路となり得る大きなイベントです。就職活動における細かいテクニック等はキャリアセンターの方に聞いていただくとして、私の方からは、心がけてもらいたいことを自分の経験からアドバイスいたします。

 いろいろな選択肢があるなか、自分が選んだ道を後悔しないことが大事だと思います。そのためには、自分でできる限り考え、悩み、導いた答えのなかから、決断することが必要です。後悔するときは、決まって誰かの意見に流されたり、事前の準備等を怠ったり、こうしておけばよかったと反省するときです。すべての企業と学生のマッチングがうまくいくことは、残念ながらありえません。就職活動にもいろいろな流行があります。メディアや周りの雰囲気に流されて就職し、後悔する方も数多く見てきました。一方、どれだけ頑張っても結果的に自分が望む企業や、業界に入れないこともあると思います。それでも、そのときに自分が考え抜いた結果決断した道であれば、たとえそれが自分に合わなくとも、前向きに考えることができると思います。

 学生にとって就職は大事なイベントですが、選択肢はそれ以外にも多くあります。ただ、就職時期になると、やはり「何となく」で就活の波に飲まれる方も多いと思います。将来何をしたいか考えるのは、大学1年生からでも決して早くありません。大学を卒業したら社会人として自立する日が突然やってきます。その準備として、大学生活では今まで以上に社会との接点が増えるので、ふとした機会に、何をしたいのか、自分はどんな人間になりたいのか、そのためには今何が足りないのか、何が必要なのか、考えてみてください。昔書いた作文を読み返したり、興味があることを調べたり、新しいことにチャレンジしたり、誰かに相談するだけでもよいと思います。それによって姿勢と視点が変わり、いつもの何気ない日常が少し変わって見えると思います。

 すぐに結論が出るものでも、無理矢理見つけるものでもないので、時間をかけていろいろ考えをめぐらせてください。結果として、それが後悔しない決断につながると信じています。

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