甲南人の軌跡Ⅱ/岩﨑 磨/インターネットと変化への挑戦 | 卒業生の活躍紹介サイト | 甲南大学

インターネットと変化への挑戦

岩﨑 磨

Iwasaki Osamu

株式会社LIXIL 勤務

1999年 理学部 経営理学科卒

趣味・特技

音楽鑑賞、飛行機に乗る事

好きな⾔葉

やればなんとかなる

学⽣時代のクラブ・サークル

自治会中央委員会

仲間とインターネットと出会った学生時代

 私の学生時代で非常に印象に残っているのは、委員会活動を通じた仲間との挑戦とインターネットの世界を知った衝撃です。

 甲南キャンプ・現代講座・大学祭・プロコンサート。4つの実施委員会活動に携わり、うち2つの活動では委員長も拝命させてもらいました。今はなくなりましたが、新入生歓迎イベントである甲南キャンプの実施委員会では人が人を選ぶ責任と仲間と1つのことを徹底的に考えて成し遂げることを学び、著名人を招いて講演会を行う現代講座では学生のニーズに合わせた講座開催を考え抜きました。大学祭実施ではプロコンサートを担当し、過去最大のイベントにするために邁進し充実した時間を過ごしました。既存の形を変えるためへの挑戦。今思えばこのときから貪欲にやっていたと思います。特に今までやったことのなかったプロコンサート2Days開催には強いこだわりを持ち、アーティスト事務所のある東京まで行き、交渉を重ねた日々もありました。実際には予算や体制の課題などもあり実現には至りませんでしたが、一緒に挑戦した仲間との絆は今でも残っており、時々集まる際の良い思い出話になっています。

 また、委員会活動と並行して研究室の仲間とともにインターネットプロバイダの起業という経験を真横で経験させていただきました。その活動が数年後に自分の社会人第一歩にもなりました。先輩のワンルームマンションに専用線を引き込み、ISDN回線も多数引き込み、海外から調達した機材や他大学の払い下げになったサーバ機を駆使して通信プロバイダを作った経験は今にも通ずる経験になっています。何もない所から何かを作る。この簡単なようで非常に難しいことを楽しく始め、苦労も多くしました。今のようにインターネットを検索すれば情報がある時代ではなく、Netnewsと言われる今では古くなり誰も使っていないと思いますが、その中で英語の情報を頼りに調べて試して動かしてみる。これを繰り返し、通信プロバイダが必要なサーバを構築していきモデムを使って実際に回線に接続し、インターネットにつなげ、サービスを提供できた瞬間の感動は大きかったです。1つの形はできましたが、大きな形になる前に時代の大きな流れに飲まれてしまったのは非常に残念ではあります。

 振り返ってみると2つの大きな挑戦ができた甲南大学の学生時代は人生最大の自由と挑戦と経験ができた4年間だったと思います。この4年間が今の自分の基礎を作り上げてくれたと思いますし、当時の仲間たちに感謝が尽きません。

ベンチャー企業からグローバル企業の最先端へ

 学生時代の経験から、自分はインターネットを支えるエンジニアとしてさまざまな会社を経験してきました。関西で働いていた約12年間はインターネット通信プロバイダ、ケーブルインターネット会社、システム開発会社などで会社や事業の立ち上げを経験し、東京では楽天、リクルート、DMM.comでエンジニアやリーダーとしてさまざまな経験を積み、現在の株式会社LIXILで働いております。

 現在の主な仕事はLIXILのIT部門を担当する役員として国内・海外を含めた約1000名のメンバーを率い、国内主要5社、海外主要2社のIT基盤を統合しグローバル企業に変革させることですが、ITでの変革だけではなくカルチャーなども含めた変革も推し進めています。

 現在はコロナの影響で今までの常識がまったく通用しない世の中になってきています。

 LIXILは住宅設備の製造という会社で新規住宅着工件数に大きく依存する体質で、日本の人口が増えない中で向こう10年を見ると売上規模は半減も視野に入る厳しい状況にあります。また、複数社が合併を経た企業でもあり、重厚強大であり重複も多く、特にIT面では非効率になっていました。

 今は真の統合に向け構造改革を行い、新規住宅着工件数が減ったとしても生き残れる会社への変革のために既存の事業ポートフォリオも大胆に見直しを進めている中でこのCOVID-19に直面しています。

 よって、さらなる変化を求められることに直面し、ただ変化するだけでは通用しない世の中になってきていると感じます。今後求められることは変化することではなく、変化し続けること。そしてそれを軸に据えた企業を作り上げることが今の自分に課せられた挑戦になっています。

 COVID-19の状況を見ると、LIXILが提供している製品は人類の衛生問題を解決する物が多く、非常に大きな責任も感じています。それを支える企業のIT基盤は統合を経てどうあるべきか。そしてそれをどういうカルチャーで活用し価値化につなげていくのが良いか。考え続ける毎日です。

 1つ言えることはまず自分がこれを体現し、率いて支えていく必要があるということです。

 その上で最近特に意識していることは、誰のために成すのかを明確にしながら行動に変えていくこと、そして、いかに速く成し遂げるかということです。言い換えると、エンドユーザーという最終顧客に対して最速で価値を提供するためにはどうすれば良いか、です。責任も非常に大きいですが、やりがいは最高にあり、毎日試行錯誤しながら実践しています。

 最近はこれまで月数回という頻度で海外を飛び回っていた日々から、毎日ビデオ会議で早朝から深夜まで時差と戦いながら家から仕事をしている日々です。なかなかしんどい状況ではありますが、これも変化と割り切って頑張っていきたいと思います。

 とはいえ、人と顔を合わせる頻度が減ってしまったのは残念でもあります。早く状況が好転してメンバーの顔も見ながら挑戦をし続けたいとも思います。

変化し続けながら受け入れて、世界に羽ばたいていこう

 今の学生の方々は、我々が経験している変化を超える大きな変化に直面する社会人人生になると思います。そのために今大学時代に必要なことは、変化し続けることができる自分の基礎を作ることと、世界で生き抜いていく武器を手に入れることだと思います。

 日本の成長は残念ながら他国に比べて鈍化していくことは避けられず、何もしなければほとんどの企業は海外の大きな流れに淘汰されていく時代も予想されます。一方で海外を見てみるとまだまだ日本の企業の価値を活かすことができるフィールドはたくさんあります。

 世界で生き抜く武器の1つに言語の問題があると感じます。ずばり英語力です。

 他国を見ると当たり前のように英語を学び使って日々生活や仕事をしています。一方日本では英語は知っているが使えないという方が大多数であるのが実態です。

 せっかく日本には良いものがたくさんあり、海外に必要とされている物が多くあります。たとえばLIXILの製品は家を持っている人が前提ですが、世界には家を持っていない人たちが非常に多くいるのが実態です。でもそのような人たちの衛生問題を解決できる製品も持っています。手を洗うことができない人たちにできるような環境を提供することや、安全にトイレを使用できない人たちに使える環境を提供することがどれほど素晴らしいことか。このようなことを自分の言葉で届けてさらに価値を加えることをしてみませんか?

 たかが言語、されど言語。使えるようになった世界の広がりはみなさんの予想を超えると保証します。ぜひ生きた言語を学生時代に身につけて社会に羽ばたいていっていただきたいと思います。

 次に大切なのは多様性を受け入れることです。日本人は日本人同士でいることが非常に多いですが、やはり変化に乏しいと感じます。世界にはいろいろな方がおられ、いろんな考え方や価値観が存在しています。それらを知るたびに新たな気付きがあり、可能性の広がりを大きく感じます。

 日本にはLIXILのように世界の衛生問題を解決する方法を持っている企業や、その他世界最高品質の製品を作れる企業や素晴らしい考え方や文化があります。それを支える日本発のグローバル企業のベースにはこのような多様な環境から学び、それに合わせた変化があったからだと大きく感じます。

 ぜひ多様性を受け入れて、自分を変化させ続け時代の最先端で活躍できる人材を目指してもらいたいと思います。

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