甲南人の軌跡Ⅱ/国広 潮里/学生時代の出会いは宝物 ! | 卒業生の活躍紹介サイト | 甲南大学

学生時代の出会いは宝物 !

国広 潮里

Kunihiro Shiori

一般財団法人沖縄美ら島財団 勤務

2013年 フロンティアサイエンス学部卒
2015年 フロンティアサイエンス研究科修士課程修了

趣味・特技

消しゴムはんこ作り、 スキューバダイビング

好きな⾔葉

どうせやるなら なんでも楽しく!

学⽣時代のクラブ・サークル

好奇心のおもむくままに、行動 !

 私は、修士課程までの6年間を甲南で、博士後期課程の3年間半を国立大学法人琉球大学大学院で、合計9年間半の学生生活を送りました。

 私が所属していたフロンティアサイエンス学部(通称:FIRST)は、少人数制だった上に、私たちが1期生ということもあり、先生方を始め、事務室の方や後輩たちとの距離も近く、とても密度の濃い6年間を過ごしました。先生方の研究室に訪問しては、何時間もお話しを聞いていただいた日は数えきれません。FIRSTでも琉球大学でも、研究が忙しい時には、夜中までヘトヘトになりながら実験をして過ごし、同級生や研究室のメンバーと励まし合っていたのが懐かしいです。このように研究漬けだったこともあり、サークル等には所属せず、平日のほとんどの時間を学校で過ごしていました。そして、休日や研究の合間の時間は、アルバイトやさまざまな活動に参加するために使っていました。

 学生生活の間に経験したアルバイトは、休憩時間にイルカを見るために始めた神戸の水族園の売店のレジや、ライブイベントスタッフ、テーマパークのライド系アトラクションの誘導、野外での生き物ガイド、ウミガメの甲羅そうじなど、多岐にわたります。この中でもテーマパークでのアルバイトを経験したことで、「将来はどんな形であれ、誰かに感動を与えて、心を動かすことのできる人になりたい」と、考えるようになりました。また、エンターテインメントは、スタッフが一丸となって、常にお客さまの安全を第一に考えながら動いているからこそ成り立つことだと学んだのも、このアルバイトからでした。この頃のアルバイト仲間とは今でも交流があり、常に考えて行動する経験はどんな仕事にでも役立っているよねと、よく話しています。

アルバイトの他には、神戸にある水族園が実施する生き物の野外調査によく参加していました。その水族園の園長に、八重山諸島の黒島にあるウミガメの研究所を紹介していただき、海洋生物の飼育補助などの研修を受けるため、長期休暇の度に訪れていました。この経験から、沖縄の自然や文化に完全に魅了された私は、「沖縄の海で生物の研究がしたい。」と琉球大学大学院への進学を希望するようになりました。

 琉球大学大学院に入学すると、念願だった海に潜って調査をする毎日を過ごしました。その生活の中で、「今度は私が、この沖縄の魅力で、多くの人の心を動かしたい。」と考えるようになり、沖縄美ら海水族館の解説員の採用面接を受けました。面接では、テーマパークでの経験や黒島での活動経験を基に、自分の言葉や方法で生物の魅力を伝えられるようになりたいとお話ししたことを覚えています。

振り返ってみると、私の学生時代の9割は研究生活で、あとの1割は好奇心のおもむくままに動き回っていたように思います。

心に興味のタネをまく!

 琉球大学大学院を修了した後、沖縄美ら海水族館で解説員として働いていました。その名の通り、水槽内の生き物を解説する仕事です。どれだけ生き物の勉強をしても、人前に出るとなかなか言葉が出ないことも多く、人通りがない階段でモゴモゴ練習したり、自分の解説を録音したものを聞いて凹んだりと、解説の質を上げるべく、毎日が修行の日々でした。そんな中で迎えた、ジンベエザメの給餌解説デビューの一言目、「こんにちは!沖縄美ら海水族館へようこそ!」を発した時の緊張と興奮は忘れられません。

 現在は、沖縄美ら島財団総合研究センターの普及開発課に所属しています。センターには、普及開発課の他に、3つの研究室(動物研究室、植物研究室、琉球文化財研究室)が設置されていて、沖縄に関する各専門分野の調査研究を行っています。普及開発課では、主に沖縄の自然や文化について「伝える」仕事をしています。学びや調査の拠点を目指す「美ら島自然学校」の管理運営や、一般向けの学習会の開催、自然科学に関するイベントへの出展、沖縄県内での出張授業や学校連携事業などです。

 学習会というのは、沖縄の自然や文化に関する、2時間前後の一般向けのプログラムです。現在、私が講師を担当するのは、主に沖縄のお土産で有名な「ホシスナ」についての学習会です。私がプログラムを組み立てる際には、「とにかく安全に楽しんでもらい、心に興味のタネをまく!」ことを目標に掲げています。「心に興味のタネをまく」というのは、学習会の参加者に「おもしろい!もっと知りたい!」と思ってもらい、これまで気にも留めていなかった身近な生き物に、目を向けてほしいという気持ちを込めています。そのため、学習会中は、参加者が楽しんでいるかどうかを確認すべく、表情に目を配りながら、進めています。終了後のアンケートでは、いろいろな感想を書いていただきますが、その中でも、「もっと知りたくなった」という言葉があれば、私の中で「心の中に興味のタネをまく作戦」は大成功です。今はまだ、職員間での反省会で、段取りの悪さや資料不足などの反省点が山のようにでてきます。それらを1つずつ改善していき、最終的にはすべての参加者に「もっと知りたい!」と思ってもらえるような学習会を目指したいと考えています。

 現在は新型コロナウイルス感染症の拡大によって、学習会などの開催にあたり、これまで通りとはいかないことも多いです。しかし、この状況をマイナスに考えず、これまで思いつかなかった方法を模索できると考え、これまでより多くの方へ、沖縄の魅力を発信していけたらと思っています。

とにかく声に出してみて!

 私は社会人になってからまだ数年しか経っていないので、的確なアドバイスになるかわかりませんが、学生のみなさんにおすすめしたいことは「自分のやってみたいことは、声に出して誰かに話してみること」です。

 学部生の頃、甲南大学同窓会の先輩に、「私には沖縄の海への漠然とした憧れがあるけど、どうやって沖縄へと繋げたらいいのかがわからない。」と相談した際に、「漠然とでもいいから、やりたいことをもっと声に出してみてごらん。きっと、誰かが聞いてくれているから。」とアドバイスをいただきました。半信半疑でしたが、それからはさまざまな場面で沖縄の海への憧れについてお話しすることを意識していました。すると、神戸在住で、沖縄と交流しながら事業をしている方々と知り合うことができ、これまで知らなかった沖縄の歴史や文化について勉強させていただくことができました。その方々とは、今でも仕事でご一緒することがあります。

 黒島の研究所で生き物の飼育などの研修が受けられたのは、神戸の水族園の園長に「もっと海洋生物の勉強がしたい」と相談して、ご紹介していただいたことがきっかけです。また、琉球大学大学院の試験を受ける前に、沖縄で予備的な調査を1か月間実施したのですが、それは「甲南大学同窓会チャレンジ基金」でいただいた資金がなければ、実現しませんでした。これも、挑戦したいことを、面接官の方々に伝えられたからだと考えています。

 さらに、琉球大学大学院に入ってから「沖縄美ら海水族館で働きたい」と考え始めたときも、「沖縄美ら海水族館でアルバイトがしたい」と周囲の友人に相談したことで、ウミガメの甲羅そうじをするアルバイトを紹介してもらうことができました。このときのアルバイト経験が、現在、美ら島自然学校で飼育しているウミガメについて説明する際に、とても役に立っています。

 改めて思い返すと、声に出すことによって、本当にたくさんの方々が私の声に耳を傾けてご縁を繋いでくださったから、今ここにいられるのだと思います。私は今後も、これまでやこれからのご縁を大切にしながら、声を出すことを忘れずに進んでいきたいと思っています。どうか学生のみなさんも、人との出会いを大切に紡いで、やりたいことを実現していただきたいと思います。そして、いつか甲南大学同窓会でお会いした際には、みなさんが紡いだ出会いのお話をお聞かせいただけることを、心から楽しみにしています。

amazon