甲南人の軌跡Ⅰ/前澤 力/甲南魂 | 卒業生の活躍紹介サイト | 甲南大学

甲南魂

前澤 力

Maezawa Riki

三菱商事株式会社勤務

2006年 経営学部卒

趣味・特技

旅行(学生時代はバックパッカーに没頭)、料理(スパゲッティ50種類はつくれます)、神戸めぐり(LOVE地元)

好きな⾔葉

「常に備えよ」

学⽣時代のクラブ・サークル

甲南OBF(就職活動支援サークル)

甲南魂

 大学時代にもっともエネルギーを使ったことは、就職活動とその後の就活支援サークル活動です。目標にしていた商社マンになりたい一心で、とくに個人的に憧れていた三菱商事への入社を目指して就職活動に取り組みました。今思い返しても、その挑戦が成功するかどうかはあまり深く考えることなく、将来の無限の可能性にワクワクしながら、何も恐れることはないと突き進みました。

 とはいえ、何度も壁にぶつかり、うまく自分を表現できずに悩み苦しんだこともありました。そのときにいつも支えてもらったのが、それぞれの目標に向かって突き進む周囲の友人たち、キャリアセンターのみなさん、そして社会で活躍されている先輩たちでした。とくに鮮明に覚えているのは、キャリアセンター主催の東京合宿です。そのときはエントリーシート提出1ヵ月前くらいのタイミングで、初めて会った同級生も多かったのですが、業界が違っても共通する悩みや将来の夢を話していると、同じ甲南生特有の「アツさ」をみんな持っていて、妙に強いつながりを感じ、時間を忘れて明け方まで語り合いました。怖いもの知らずで、意識が高く、大きな野望をもっている仲間が甲南にいて、心強さと同時に、負けたくない思いが一層強くなったことを覚えています。合宿では、まだ就職活動の本番が始まっていないにもかかわらず、「これだけアツいメンバーがいるんだから、内定もらったら、後輩にも何か残さないともったいないよね!」「この間OB訪問で会った先輩がすごく素敵な方で後輩にも紹介したい!」「みんなそれぞれの目標は高いけど、内定という結果を早く出して後輩に道をつくろう!」と気の早い会話までしていました。

 そのときに結成を誓ったのが、就活支援サークルの「甲南OBF」です。「就活Of the Student、By the Student、For the Student」の略で、就活を終えたばかりの学生だからこそ伝えられる情報はもちろんのこと、合宿のときに語り合ったアツい思い、正に「甲南魂」を繋いでいきたい!という意思を込めた名前です。合宿後、各業界で内定をとってきたメンバーで集まり、すぐに甲南OBFの活動を始めました。私が初代の会長に就任し、個々人のリアルな就活体験を生の言葉で直接後輩に伝える活動を手づくりで行いました。就活を通じて過去を見つめ直し、将来の夢を具体化していくことは容易ではないですが、後輩たちと正面から向き合い、語り合い、自分たちがもう一度就活をしている気持ちで活動を行いました。

 12年が経った今でも、甲南OBFの活動が継続されていると聞いて、世代を超えても変わらない「甲南魂」の強さを実感しています。OBF卒業生の1人として社会で活躍することが、母校やOBFへの恩返しになると信じ、「甲南魂」を誇りに、これからも過ごしていきたいと思っています。

変わらないことはリスク

 「総合商社って何?」「いったいどんな仕事をしているの?」「業界分析のときにもよくわからなくて悩む!」という経験を持つ方は結構いるのではないかと思います。ここでは自社の紹介を通じて、とくに就活で商社に興味がある方へのヒントになればと思います。

 自分自身も就活をしながら正直よくわからない会社だなぁと思っていました。実際に入社した今でも、まだ全部門の業務内容は把握できておらず、久しぶりに会う同期や先輩から話を聞いて初めて知る仕事や、日経新聞を見て初めて知る案件も多々ありました。社内の組織図も頻繁に変わり、新規事業に参入することや、これまでの事業から撤退する例も数多くあり、「変化することがあたり前」の会社です。

 つまり、総合商社、そのなかでも弊社は、目まぐるしく変わる時代の変化や事業環境を先読みし、その変化に対応して事業を展開していくことこそが強みであり、わかりにくければわかりにくいほど、変化に対応できている、ということになります。むしろ誰にでもわかるようになってしまうということは変化に対応できていない、先読みできていないということです。したがって、逆説的ですが、会社の全容はわからなくていいし、わからないことこそが強みであり、変わらないことは寧ろリスクであると言えます。

 では、そういう会社で働く人たちの共通点は何か。それはその変化を楽しめる人が多く集まっていることだと思います。変化することは、時に自己否定や、これまでの過去の実績を否定するということで、決して心地よいことではありません。寧ろ、常にチャレンジを続けることは大変な苦労を伴います。同時に、そのチャレンジを達成したとき、常に成長を感じることができます。年齢を重ねても向上心や好奇心が高く、大人なのに子どもの心を忘れない、そういった魅力ある人が数多くいると思います。

 私自身、変化を恐れないで成長していける人間になりたいと常日頃から思っていますし、そういった環境で社会人生活を送れることは、この上ない幸福なことであると感じています。

 英語が苦手だとか、海外経験がないということで、もし総合商社への入社希望を躊躇している方がいるとすれば、そういった外面のみならず、「変化を楽しめる力を持った人」「少年の心を持った大人になりたいと思う人」「向上心で溢れている人」「チャレンジすることが楽しいと感じられる人」には、非常にマッチする業界・会社だと思います。もちろん、業界を問わず、常にチャレンジすることは歳をとるほど難しいことですから、そういった気持ちを忘れずに、素敵な社会人人生を過ごすヒントになればと思います。

全力で「今」を楽しむこと!

 学生のみなさんに送るメッセージは一言だけ。それは「全力で今を楽しむこと!」。これに尽きます。「今」を楽しむという意味は、単純に仲のよい友だちや慣れ親しんだ環境で過ごして楽しむという、「楽」という意味ではありません。学問でも、部活でも、サークルでも、地域や課外活動でも、バイトでも、趣味でも、自分が好きなこととして選んだことを正面から全力で取り組んで、時に苦労や周囲との喧嘩になったりするようなことがあっても、逃げずに最後まで取り組み、その先にある「楽しい」を追い求めていくということです。よく「未来から逆算して今を過ごせ」といわれますが、個人的には「今」を全力で過ごすことで、おのずと未来がついてくると思っています。

 自分自身の経験では、18歳の甲南大学入学前に行った「初海外・1ヵ月間の1人エジプト旅」でそのことを実感しました。当時、受験を頑張って甲南大学への合格をもらった後、高校最後の春休み1ヵ月間に何をしようかと思っていたとき、姉の彼氏(現在の旦那さん)が商社マンで若くしてエジプトに駐在していたご縁から、初海外にもかかわらず1人でエジプトまで旅をしました。当初は、大学にも入学できたし、何でもできるような根拠のない自信をもとに、何か新しい経験ができるかなと軽い気持ちで考えていました。ところが実際には、受験でそれなりに勉強した自分の英語はまったく通じないし、買い物をすることも、タクシーに乗ることも本当に苦労するし、お店でアイスクリームを1つ買えただけで心から嬉しく達成感を味わうような、まるで赤ちゃんのような自分を情けなく思うばかりでした。受験勉強を通じて積み重ねてきたことが何も通じない、これまでの18年間はいったい何だったのだろうと、自分の過去を全否定されたような思いになりました。

 そうとはいえ、せっかくエジプトまで来たので、このままでは帰るわけにはいきません。思い切って、体あたりでコミュニケーションをとっていくと、多少言葉が不自由でもわかり合えることが増え、少しずつできることが多くなりました。日々成長していく自分を感じることができました。最初にエジプトに着いたときには、目の前に広がるサハラ砂漠を見て「早く帰りたい」という気持ちだったのが、帰国する頃には「もっといたい!」と思えるまで成長することができたのです。そして、横で英語を使ってエジプト人と仕事をしている義兄を見て、どこでも適応して力を発揮できる姿に憧れを持ちました。その後、甲南大学に入学し、1ヵ月間の一人旅を計5回で20ヵ国以上を旅し、英語は不可欠と思うなかで1年間のアメリカ留学も果たし、結果として商社マンになることができました。

 私は決して、将来の夢を入学時代から抱いていたわけではありません。目の前のことに全力で取り組み、できなかったことをできるようになるまで努力してきた結果、未来がついてきたと思っています。そのときは目の前のことに必死で、できるようになったことが楽しいという思いだけでしたが、その「今を頑張れる力」は、社会人になっても大変重要な能力だと思います。みなさんは、「今」や「目の前」のことに全力投球できていますか?もしかしたら、それに全力を尽くすことで、何か道が拓けるかもしれません。

amazon