甲南人の軌跡Ⅱ/鍋島 志織/卒業後も大学時代は続いていく | 卒業生の活躍紹介サイト | 甲南大学

卒業後も大学時代は続いていく

鍋島 志織

Nabeshima Shiori

株式会社エスティック 勤務
歌人

2013年 文学部 人間科学科卒

趣味・特技

短歌、ボードゲーム

好きな⾔葉

やってみたいを、 やってみよう。

学⽣時代のクラブ・サークル

文化会軽音楽部

やりたいことは全部やった4 年間

 学生時代は、とにかく「やりたいことを全部やった」4年間でした。特に部活動と勉強面は、やり残したことはないと思えるほどです。なんでもやって学費の元を取ろうくらいの気持ちも正直ありました。

 軽音楽部では、たくさんバンドを組み、100曲以上の楽曲をコピーする一方、部活内で互いに本をおすすめする「読書推進委員会」というイベントを開催したりしました。高校時代までは、何かをやってみたいと思っても一緒にやってくれる相手が見つからないことが多かったので、自分のやりたいことに付き合ってくれる人がいる環境がとても幸せでした。部活動でできた友人や先輩、後輩とは、卒業した今もよく遊んでいます。

 勉強面では、興味関心のある授業をとにかく積極的に受講しました。そもそも人間科学科を選んだ理由は、1つのジャンルではなく、心理学・社会学・環境学・哲学・芸術などを幅広く学べるところにあったためです。入学後、文学部の他の学科の授業も受講できる制度を知ってからは、楽しそうと思えば他の学科の授業でもおかまいなく受講しました。ゼミも2つ入れる制度があったので、2つのゼミに入り卒業論文と卒業制作のどちらも完成させました。

 大学に入って最初の授業で、「どんな名作にも欠点を、どんな駄作にも利点を見つけられるようになりなさい。いろんな角度から物事を見ることができるようになってほしい」と言われました。感銘を受けた私は、読書や映画鑑賞のあとに、感想ノートをつけるようになりました。感想ノートには良いところと悪いところを織り混ぜて書くようにしました。すると、つまらないと感じたものでも、細かい部分で良いところを発見できるようになっていきました。ストーリーは退屈に思えても文章に魅力を見つけられたり、好きなシーンが多いことに気づいたりしました。無理やりにでも良いところを探しているうちに、自分のセンサーが活発に動き出したような気がしました。この経験は仕事でも趣味でも役に立っています。仕事を始めてからは大学時代ほど時間がなく、昔ほど丁寧な感想ノートを書けなくなってしまいました。時間のある大学生のうちに感想ノートを書いていて良かったです。

 大学時代はやりたいことが存分にできた最高の4年間でした。そのおかげで、今も「やりたいことはどんどんやってみよう」と思えるようになりました。やりたいことがあれば呼びかけて、興味を持ってくれた人と一緒にやってみる。やってみて、うまくいかなかったら反省してまたやり直す。そういうことが今も自然にできるのは、大学での4年間のおかげだと思います。

仕事も短歌も手を抜かないという選択

 現在はメーカーのマーケティング室で働きながら、短歌に関する活動を行っています。短歌の活動を始めたのは卒業してからのことでしたが、学生時代に勉強と部活、趣味、アルバイトと、並行していろんなことをやったおかげで、仕事と短歌を両立して活動できているんだと思います。

 短歌の活動では、短歌のカードゲーム「ミソヒトサジ」を制作・販売したり、短歌のWebマガジン「TANKANESS(タンカネス)」を立ち上げたり、短歌のワークショップを開催したりしています。岡本キャンパスの5号館にあるギャルリー・パンセで短歌の展示を行ったこともありました。

 趣味で短歌のワークショップを開催しているうちに、3年前から甲南大学の留学生向けの授業で年に一度、講師として短歌を教える機会をいただくことになりました。大学で授業をできたことは自信につながり、それ以降は求職者や不登校の学生など、いろんな方に向けてワークショップを行っています。

 卒業してからも母校とつながりが持てるのはとても幸せなことだと思います。カードゲームを生協に置いていただいたり、ワークショップを開催させていただいたりと、卒業してからも甲南大学にお世話になるとは、当時は思っていませんでした。

 学生時代の「感想ノート」で身につけた「良いところを見つける」目は、講師として非常に役に立っています。どんな短歌を提出されても、必ず良いところを見つけて褒められるからです。

 メーカーのマーケティング室に転職したのは今年の1月でした。「自分の意見を出す」ことを歓迎される職場で、人間科学科のたくさんのレポートやディベートの中で培った力がここでも発揮できることを嬉しく感じます。

 意外だったのは、社内での会議で活発な議論が行われている最中にホワイトボードに議事録をまとめていると、「議事録を取るのがうまい」と褒められたことです。大学で授業のノートをわかりやすくまとめようと努力した経験がこんなところで実るとは思っていませんでした。

 業種も職種もこれまで経験のないもので、まだまだ勉強しなければいけないことがたくさんあります。しかし、大学で未経験だったギターを毎日練習しているうちに少しずつ自信がついたときのように、「初めてだから」を言い訳にせずに頑張れる力が自分にあると信じています。

今の自分が、未来の自分を助けてくれる

 学生時代は、やったことがやった分だけ力になる時期だと思います。それは、ギターを頑張ったからギターがうまくなった、というスキルだけの話ではありません。私は、不器用な自分が毎日基礎練習を継続することで上達した経験から、自分には「初めてのことでもこつこつ努力できる」自信がつきました。

 リズム感がまったくなく、不器用でギター未経験だった私は、部活に入ってすぐに「うまくなるのは無理やな」と感じました。「適当にやりながら、そこそこ楽しめればいいか、勉強もバイトもしたいし」という諦めのような気持ちがありました。2回生になる前に、先輩から基礎練習の仕方を丁寧に教えてもらいました。「毎日練習して、手帳に丸をつけろ、たまに手帳をチェックするからサボるなよ」という本気か冗談かわからないことを言われました。そのとき、「冗談かもしれんけど、とりあえず毎日やろう」と決めて、その日からどれだけ忙しくても、最低5分はギターに触るようにしました。旅行の日でも、でかける前に5分だけ弾いた記憶があります。自分は継続力がないと思っていたので、毎日基礎練習を続けられたことが自信になりました。1回生のときの気持ちのままだらだら続けていたら、そんな自信はつきませんでした。

 感想ノートをたくさん書いていろんな角度から物事を見られるようになったこと、自分の意見を出せるようになったこと、部活と勉強を並行して頑張れたこと、大学時代に頑張ったことが、今の自分の自信になっています。

 やったことがやった分だけ力になるというのは、もちろん社会人になってからも一緒です。ただ、学生時代は自由に使える時間がたくさんあります。私のようにやりたいことを広く浅くやってもいいし、1つのことに集中して時間を割り振ることも可能です。

 今は何に役立つかわからないような経験が、何年もあとになって役に立つことがあります。学生時代と社会人生活はきっぱり分かれているように思えますが、実は地続きです。4年間で、学科や部活動の友達や先輩、後輩、教授、たくさんの出会いがあると思います。その出会いの中に、卒業後も関係が続く方がいるはずです。悩んだときに話を聞いてくれる、どうでもいいことを話せる、自分の知らない世界を教えてくれる。たくさんの素敵な方に出会えるはずです。

 楽しいことも苦しいことも、たくさん経験してください。今のあなたが、未来のあなたを救ってくれる日が何度もあるはずです。

amazon