甲南人の軌跡Ⅱ/坂本 佑樹/警察官出身の芸能マネージャー | 卒業生の活躍紹介サイト | 甲南大学

警察官出身の芸能マネージャー

坂本 佑樹

Sakamoto Yuki

株式会社ワタナベエンターテインメント
マネージャー

2016年 経済学部卒

趣味・特技

野球、筋トレ、お笑い、懐メロ、映画、美食巡り

好きな⾔葉

後悔などあろうはずがありません

学⽣時代のクラブ・サークル

テニスサークルAz、学園祭ステージ 実行委員会

「淡路島から片道2時間の通学旅」

 私の出身は、兵庫県淡路島という、電車も走っておらず映画館もないけれど、自然が豊かでのびのび過ごせる田舎です。私は、そんな島が好きだったので家から大学まで片道約2時間かけて通っていました。東京にいる今となっては、こんな長時間の移動は耐えられません。

 私は、学生時代、主に「学園祭ステージ実行委員会」に所属し、「ディズニーストア」でアルバイトをしていました。また、被災地のボランティア活動をしたりテニスサークルで企画運営の幹部を務めたりもするかたわら、昔からテレビっ子だったので、暇さえあればテレビ番組の収録の観覧に行くなど、興味を持ったことには全部トライした大学生活でした。

 それらの中でも、「学園祭ステージ実行委員会」の活動は、特に思い入れが強いです。秋の学園祭で開催される、ミスコンテスト、ミスターコンテストとお笑いNO1コンテストのステージ企画運営をしていました。ステージの企画や備品をすべて1から作り上げるので、毎年6か月間かけて毎日企画会議を行い、徹夜で作業をしていました。この準備期間が、なかなかきつくてエナジードリンクのレッドブルをしょっちゅう飲んでいました。それでも続けられたのは、自分の自由な時間を犠牲にしてでも人を楽しませたいという志を持ったメンバーとともにつくりあげたステージで、拍手喝采をもらう時の鳥肌が立つほどの喜びが味わえるからです。毎年その本番を終えた後、実行委員会メンバー50人くらいで岡本にある居酒屋で打ち上げすることが恒例になっていました。みんな学園祭に思い入れが強く、全員で抱き合って号泣していました。その瞬間は、まさに学生でしか経験できないことだと思います。社会人になった今でも、当時のメンバーと集まって昔話をしてバカみたいに笑っています。学園祭の思い出と、一緒に頑張ったメンバーは、自分にとってかけがえのない宝物です。 学生時代に一番大変だったことは、就職活動です。家族そろってお笑いが大好きだったので、絶対将来は芸人さんと仕事をしたいと思っていて、お笑い芸人が所属する東京のタレント事務所をすべて受けました。合計で淡路島と東京間を10回以上往復し交通費も恐ろしい金額でしたが、むなしく全敗しました。大学生活最後の最後でつまずいた私でしたが、この経験が私にとって夢をかなえる糧になったのです。

付き人ではなく、プロデューサー

 就職活動では全敗だった私ですが、今は憧れの会社で憧れの人とお仕事をさせてもらっています。なぜ就職できたかというと、違う業界に就職したことで一まわり成長できたからです。私は希望する業界への就職活動はうまくいきませんでしたが、第二志望の警察官を志望し、無事就職することができました。しごかれまくった警察学校に始まり、ようやく警察官になれてからも、厳しい先輩方との24時間勤務や、泥酔者の保護、凶悪犯との対峙など、これまでに経験したことのないハードな日々が続きました。ご遺体を目の当たりにすることもあり、体力的にも精神的にも本当に厳しく、何度も挫折しそうになり、忍耐力と根性を養われた3年間でした。学生時代に比べ少しは成長できたという自信がつくにつれ、もう一度芸能事務所の就職活動に挑戦してみたいという想いが強くなりました。かつて一番憧れていた業界最大手のワタナベエンターテインメントに最後の望みで応募した結果、タレントマネージャーとして採用していただけたのです。今となっては警察官としての経験は貴重な財産ですし、現在の会社にも感謝しております。人生何があるかわかりません。

 マネージャーの仕事について、説明します。仕事内容は、みなさんが想像する通りタレントのスケジュール管理をすることです。ただ、実際にこの仕事をしてイメージとの違いを感じたことは、マネージャーは付き人ではなくプロデューサーであるということです。たとえば、担当のタレントを活躍させるために、どう番組に挑むのがいいかをプロデューサー目線でタレントにアドバイスをします。またどう売り込むかという戦略を立ててテレビ局などに営業に行くのもマネージャーの大事な仕事です。

 マネージャーのやりがいは、やはり子供のころからテレビで憧れていた番組の収録現場に行けることや、たくさんのタレントに会うことができることです。また、テレビ局のスタッフの方や他事務所のマネージャーなどいろんな職種の人と交流して仕事をするので、人脈が広がります。

 マネージャー業で大変なことの1つは、タレントの人生を守る大きな責任があることです。タレントはイメージによって仕事が左右されるので、マネージャーが失敗すればタレントの失敗として直接イメージが傷つきます。だから、自分はタレントの分身だとおもって仕事や普段の生活をしています。

 仕事でこんなハプニングがあり、危機管理の大切さを痛感しました。地方での生放送の際に、東京発の飛行機が荒天により大幅に遅延したのです。不可抗力とはいえ、生放送に間に合わないとなれば、大変なことになります。現地に到着後、ドライバーさんやスタッフの方のおかげで生放送には間に合い無事放送を終えたのですが、そういった予期せぬ事態も想定して準備しなければならないことを学びました。私もまだまだこれから頑張ります!

「親に感謝して、自分への時間を思いっきり使ってください」

 学生時代にやっておいた方がいいと思うことは2つです。

 1つ目は、「直感的に好きな人と好きな場所で好きな時間だけ過ごしてください」ということ。

 私の学生時代は、興味を持ったら迷わず好きなアルバイトや好きなコミュニティに所属し、それによりたくさんの経験を積んだり人脈をつくったりすることができました。就職活動に失敗して落ち込んでいるときに、励ましてくれた大切な友人や先輩、転職して単身東京に来た際に、支え応援してくれる人がたくさんいて、縁は大切にしておくべきだと痛感しました。最近も縁を感じたことがありました。以前、私が担当するタレントが、別のタレントと同じ番組に出演することになったのですが、相手のタレントのマネージャーが大学時代の友人だったのです。その友人が他の事務所でマネージャーをしていることは知っていて、いつか仕事で会えたらいいなと思っていたのですが、実際に出会って握手をしたとき、大学時代の友達が同じ業界人としてテレビ局の収録現場にいる、それが何か不思議な感じがして、これが縁というものなんだと実感しました。

 大学生は、好きな授業、アルバイト、サークルなどのコミュニティを選ぶことができ、自分の時間がたくさん使えます。社会人となれば会社からお金をいただく限り責任も伴うので、会社の上司や取引先など他者への貢献のために時間を費やします。ですから、大学生のうちは直感的に「これがしたい!」と思ったことはやるべきです。何もしないことが一番もったいないですよ。

 2つ目は、「親に感謝をしてください」ということです。

 親は偉大です。私はバカヤロウなので、親の偉大さを感じたのは社会人になってからです。

 大学を卒業させてもらってようやく警察官という職につけたのに、その仕事を辞めるということは親不幸なことだ、と思い悩みました。私は初めて両親を食事に誘い、怒鳴り殴られる覚悟で転職することを打ち明けました。すると両親は怒るどころか、「おめでとう。いい話を聞けてよかった」と言ってくれたのです。もう頭が上がりません。転職する前に旅行をプレゼントしましたが、まだまだ親孝行できるよう頑張ります。大学に通えていることは、あたりまえじゃないということを意識してください。そうして学生生活を送ってみれば、時間を大切に使えるはずです。社会人になってからでもいいので、親孝行をしてみてはいかがでしょうか。

 今は私の学生時代と違い、コロナ禍などでこれまでの常識が通用しなくなる大変な時代になりましたが、みなさんお身体には気をつけて大学生活をお過ごしください。最後に、未熟な私の経験談を最後まで読んでいただき、ありがとうごいました。

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