甲南人の軌跡Ⅱ/嵜本 捺愛/かけがえのない大学生活 | 卒業生の活躍紹介サイト | 甲南大学

かけがえのない大学生活

嵜本 捺愛

Sakimoto Nae

株式会社カネカ 勤務

2015年 フロンティアサイエンス学部卒
2017年 フロンティアサイエンス研究科 修士課程修了

趣味・特技

バドミントン、映画鑑賞

好きな⾔葉

諦めなければ、道は拓かれる

学⽣時代のクラブ・サークル

サイエンスの面白さに気づかせてくれたFIRST

 フロンティアサイエンス学部に進学を決めたきっかけは、先端科学を学ぶことができ、1年生から実験ができる、という点でした。遺伝子工学や細胞工学に興味があり、核酸の研究室が多いところも決め手となりました。とはいえ、入学前には、適度に学んで、アルバイトにも勤しみ、といった大学生活を描いていたため、実際に入学してその考えの甘さを痛感しました。週1で実験があり、レポートも多く、夜遅くまで残って学習することも当たり前でした。ですが、友達や先輩が自然と集まる「マイラボ」という学習スペースで切磋琢磨し、時には先生も巻き込んで学んだ毎日は、しんどいながらもとても充実した楽しい時間でもありました。

 さらに人生を変えたきっかけが学部2回生の時に受講した授業と実験。サイエンスの面白さに圧倒され、本気で学びたいと考え、「研究者になる」ことを目標にした瞬間でもありました。その後、無事、第一志望の研究室に入ることができ、研究科への進学を決めたのですが、大学院進学への道のりは相当険しいものでした。

 片親で決して裕福な家庭ではなかったのに加え、この頃に親が病気で入院したり、勤めていた会社が倒産したりと、進学どころではない状況に陥りました。当時の私はほとんど大学にいて、昼間は大学、夜に家計を助けるためのアルバイトをして、大学に戻る、という生活を過ごしました。アルバイトをしている間にも友人は実験をして成果を出していきます。彼らに負けたくなかったのはもちろん、何よりもこの苦境に屈したくありませんでした。親には就職してほしいと言われましたが、無理を言って進学をお願いしました。家計が苦しい中で、学ばせてもらっているという有難さと責任を痛感し、この時間を無駄にするまい、自分にとってチャンスになることは貪欲に挑戦すると決意しました。

 在学中、自身の成長を感じた経験となったのが、「消費者啓発活動」です。学生が主体となり、産学連携で消費についてのセミナーや啓発活動を行います。私は、リーダーとしての約3年間の活動の過程で、県民生活審議委員に選出され、県委員としても1年間活動しました。この活動を通して、企画運営について経験するとともに、チームマネジメントを学ぶことができました。「ほう・れん・そう」(報告・連絡・相談)の大切さ、目標から逆算して、達成のために必要なことを考えて行動すること、そして、仕事は与えられるものではなく、自分で考えて見つけ出すもの。すべて現在の仕事にも活かされています。もう一つは、理化学研究所での技術者としてのアルバイト経験です。研究者になりたい自分にとって、日本の最先端の研究施設を経験できたことはとても貴重な経験となりました。

 このような活動を行いつつ、研究にも励み、修士課程の修了発表では最優秀賞を受賞することができました。これまで頑張ってきたことが報われた気がして、とても嬉しかったです。甲南で過ごした6年間は、正直、二度と経験したくないくらいしんどい時もありましたが、やり抜くメンタルの強さを身につけることができた期間でもあり、何より研究室の先生や同期、後輩、そして家族に支えられた学生生活でもありました。

仕事を通じて大切にしていること

 現在働いている企業は、理化学研究所での技術者としてのアルバイトがきっかけで出会いました。本当に「ご縁があった」という言葉がぴったりで、先輩社員の方に話しかける機会があり、自らコンタクトを取って入社したい旨を伝えたところ、日を改めて会う機会を作っていただき、仕事内容などについて教えていただきました。説明会に参加することができなかったのでとても貴重な時間となりました。その後入社試験を経て今に至るのですが、あの時に話しかけるという行動ができたことが好機に転じたと思います。何事も行動を起こさなければ可能性はゼロのままですが、目的達成の為に行動すれば可能性はゼロではなくなります。

 株式会社カネカは「カガクでネガイをカナエル会社」というキャッチコピーのもと、地球環境保護や高齢化社会、省エネルギー健康、食といった課題に対して化学の力で解決していく会社です。大学時代には自然科学に関して広いバックグラウンドを持っておけるように幅広い分野で学習していたつもりでしたが、現在の担当分野で用いる評価法や実験・分析手法は新しいことばかりでした。まだまだ勉強しなければいけないところはたくさんありますが、大学の頃に身につけた「学ぶ姿勢」を活かして取り組むことでできることも増え、徐々にスキルアップに繋がっていると実感しています。会社に入ると万事がうまくいくわけではなく、必ず何かにつまずきます。そんなときはいつも「自分はできないやつだ」と卑下するのではなく、解決するために「何ができるか」を考えています。解決するための努力は必須ですが、このとき大切なのは「自分で解決できないなら周りの人に頼っていい」ということです。新しい環境・人間関係の中で、わからないことを上司や誰かに正直に伝えるということは難しいことですが、一方で仕事は効率も求められるので、1人で抱え込むことなく、周りに発信しています。この時も、謙虚さは忘れず、教えてくれた方にはしっかりと感謝を伝えています。良い人間関係を構築することは、社会人生活で強い後ろ盾になります。

 現在の職場において大学時代と決定的に異なるところがあります。それは、大学時代には「おぜん立て」があったということです。何かを成し遂げたいと思った時に、周囲が挑戦する「場」を用意してくれることの多かった大学時代と異なり、社会人では何もないところから自分で目標を作り上げ、挑戦の場を自発的に開拓していくことが求められます。そんな場にいるからこそ仕事をしていく上で、自分はこうしたい!という思いをしっかりと持って働くことが大切だと考えています。私の現在の仕事内容の1つとして「新規技術の確立」があります。これまで検討したことのない技術を確立していくことに難しさを感じています。自分の意見が形になって技術を確立させ、そこから製品化を行い、商品として販売できるまでにしたいというのが今の大きなやりがいであり、目標です。

21 世紀を担うみなさんへ

 大学時代は責任がありつつも自由でとても貴重な時間です。私は好きなことを思いっきり楽しみました。それが今に繋がっていると断言できます。在校生のみなさんには、今を思いっきり楽しんで毎日を過ごしてほしいと思います。その一方で、何か1つ「やり切った!」といえる経験をして欲しいとも思います。アルバイトでも部活動でも何でも構わないと思います。「これ!」という目標を持ち、信念をもってやり切れば、その経験が自分の糧となるはずです。そして願わくば、いち早くなりたい自分、したいことを見つけて、それに備えてほしいと思います。目標を早く見つければ見つけられるほど、それに多くの時間を注ぐことができますし、結果も伴ってくるはずです。

 私の場合「先端科学を学びたい!」そんな思いで入学した大学でしたが、入学直前までの私が、どこまで真剣にそれを考えていたのか、今思い返してみると、怪しいようにも思います。そんな状況だったからこそ、学習に向かう姿勢が遅れ、1年次に1科目の単位を落としてしまいました。この時はあまり気にならなかったこの事実がのちに、入学直後の自分の考えの甘さを痛感し、自分に猛省を促すことになりました。

 2年生になり、入りたい研究室もできると、私は学ぶ姿勢をこれまでと一変させて勉強に励み、科目によってはテストで学年1位になるなど、成果も出てきました。しかし、研究室の配属が成績順で決まる中で、1年次の成績が足を引っ張り、成績は思ったより伸び悩みました。「第一志望の研究室に入れないかもしれない」不安から口にした言葉は、ある人に一蹴されました。「入れなくても、1回生の時にしていなかったから仕方ない」と。悔しかったけれど何も言い返せませんでした。どれだけやる気があっても結果が伴っていなければそれを主張する権利はありません。結果重視は社会でも通じることです。目標を早くに立てて行動できる者がリードし、圧倒的に有利になります。私は、あの時の自分自身の「甘え」に憤慨し、奮起しました。その意味で、一年生で失敗はしましたが、とても大事なことを学ぶことができました。

 時間を忘れて何かに熱中することができる。それが大学生活の意義だと考えます。興味を持ったらまずはチャレンジし、迷うことなく試みてみる。それが、やりたいことだという判断になれば、ぜひ貪欲に突き進み、チャンスをつかんで欲しいと思います。失敗を恐れず挑んでいくことで、自分の自信となり駆動力になると思います。私はどんなに困難なことやしんどいことでも、諦めなければ道は拓けると信じています。まずは一歩、踏み出すことから。 みなさんの大学生活が実り豊かなものであって欲しいと切に願っています。

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