甲南人の軌跡Ⅰ/竹田 晃洋/心赴くままに、全力で、世界へ | 卒業生の活躍紹介サイト | 甲南大学

心赴くままに、全力で、世界へ

竹田 晃洋

Takeda Akihiro

東宝株式会社勤務

2007年 経済学部卒

趣味・特技

二児の子育て

好きな⾔葉

「我以外皆師他」

学⽣時代のクラブ・サークル

大学時代の思い出

 2003年に宝塚の公立高校を卒業し、同年甲南大学に入学。2007年までの4年間、経済学部経済学科で学びました。友人に恵まれすぎたためか、はたまたキャンパスが美しすぎたためか、入学当初は授業を抜け出しては課外活動に勤しむ不良学生でした。その結果、2回生に上がっても単位不足でゼミを履修することができず、生協で1人パンをかじりながら、大変寂しい思いをしたことを記憶しています。

 その反動か、2回生になってからは授業を熱心に受けるようになり、次第に授業で学ぶ「社会の仕組み」が面白く感じられ、2・3回生のときは、フル単位を取得。気づけば、4年次を残してほぼ卒業単位に到達していました。とくに、ミクロ・マクロ経済学、統計学、ヨーロッパ経済学、地誌学等の授業は、世界と地域のつながりをいろいろな側面から学ぶことのできる大変興味深い授業でした。

 小学生の頃から硬式テニスを続けていましたが、怪我の影響で高校卒業と同時に競技を引退。大学では、憧れだった体育会硬式庭球部への入部を諦め、テニスサークルに入部しました。所属したサークルは、練習よりも「食事会」の方が多いサークルであったため、入学当初は、いわゆる“大学生らしい日々”を謳歌しました。しかし、「競技に打ち込みたい」という思いが止まらず、悶々とした日々を過ごすなかで、バンド活動をしていた大学の友人(田中君、清水君)の影響から、人をエンターテインすることの価値を強く意識するようになりました。

 「今はできないけれど、できるようになりたい事×人を魅了できるもの=大好きなマイケルジャクソンの得意技「ムーンウォーク!」」という超短絡的なロジックで、今度はダンスサークルの門を叩きました。入学当時、1学年上の並村先輩が創設したばかりの部員数わずか3名程度の「ZEALOT」というサークルでした。田中君、清水君とともに体験入部し、そのまま2人とチームを組み、3年間ダンスに没頭しました。踊るだけでなく、音を編集したり、振りを考えたり、ショーの企画・運営などにも携わりました。

 思い返せば、ここからエンターテインメント業界に身を置きたいと考え始めたような気がします。きっかけをつくってくださった並村先輩、田中君、清水君に深く感謝すると同時に、今では200名超が所属するマンモスサークルに育った(らしい)ZEALOTのますますの健全な繁栄を祈ります。ちなみに、並村先輩は、私の香港駐在時代、前職で台湾に駐在されていたり、現在も同業他社のKADOKAWAの本社でご活躍中であったりと、いつも身近なところで私の手本になり続けてくださっています。

 学外では、イギリスに留学していた従姉を訪ね、同級生とともに欧州各国を2ヵ月ほど旅行しました。当時ではすでに珍しく、大学生になっても海外バージンだった私は、20年間溜めに溜めた異文化への好奇心がここで一気に爆発。規格外のカルチャーショックを受け、「エンターテインメント×外国」を自分の人生の柱の1つにすると強く心に決めました。帰国後、大学の交換留学プログラムを利用してカナダに短期留学しました。「やるならとことん」という性格のため、カナダ留学前にロサンゼルスにもホームステイし、ハリウッドのメジャースタジオをすべて周ったり、日本人グループから離れて、6ヵ月間一言も日本語を話さずに生活しました。ここで、さらに「多様性の面白さ」を強く感じ、それが今でも私の人生に強い影響を及ぼしていると感じています。

 このように、海外で脳天を打ち抜かれた私は、目標を「エンターテインメントと異文化交流を用いて、人々の暮らしを豊かにすること」に具体化し、マスコミとエンタメに絞って就職活動を開始。100名を超える先輩社員のOB訪問を行い、東京にある甲南のネットワークキャンパスにも頻繁に足を運び、叱咤激励をいただきながら、多くのことを学ばせていただきました。私は、自分なりに考えて納得しながら就職活動したかったため、就活サークルのような組織には属していませんでした。それゆえ、100人のOBが私の先生であり、ここでいただいたアドバイスがなければ、私の就活は到底うまくいかなかったと思います。忙しい仕事の合間を縫って、右も左もわからぬ不躾な学生に指導いただいた諸先輩方に、心から感謝しています。

現在の仕事

 2007年4月、映画製作・配給を主業とする東宝株式会社に入社しました。その後、不動産経営部に仮配属、映画館での研修、演劇を上演する帝国劇場での勤務を経て、2009年に映像本部国際部に配属されました。2012年から4年間、香港に駐在し、現在は東京本社に帰任して、同部国際戦略室営業グループリーダーを務めています。

 私が勤めている東宝という会社は、「映画・演劇・不動産」の3事業を軸に、夢や感動、喜びをもたらす良質な娯楽作品を、幅広い層のお客様に届けるエンタメ企業集団です。私が現在担当している業務は「海外配給」です。かみ砕いて説明すると、東宝が日本で製作する映画やテレビシリーズ等のコンテンツを、日本から外国に輸出する仕事です。輸出といっても、映画やテレビドラマの場合、物理的に形があるわけではありませんので、実際に輸出するのは「コンテンツの利用権」です。権利を世界中の映画配給会社やテレビ局、配信プラットフォームに「ライセンス」することで輸出します。具体的には、①契約交渉、②英文契約作成・締結、③宣伝プラン策定等、を一気通貫で行い、現地公開やテレビ放送を実現に導きます。

 契約交渉は、カンヌやベルリンなどで開催される映画祭に出張して実施し、作品の価格やその他の条件を、海外配給会社の買い付け担当者と向き合って一対一で交渉します。現地での公開が決定すれば、俳優・女優や監督をお連れする海外プロモーションを実施することも多々ありますので、海外での活動が多分に求められる仕事です。

 これまでに担当した作品は、長編映画、シリーズを含めると100作品を超えますが、代表的なのは「君の名は。」「シン・ゴジラ」「ドラえもん」「進撃の巨人」等で、日本だけでなく、外国でも大ヒットを記録しました。また、「僕のヒーローアカデミア」や「ハイキュー!!」等、テレビアニメシリーズの海外配給も担当しており、全世界の日本アニメファンの熱を全身で受け止める日々を過ごしています。この仕事の何よりも好きなポイントは、異文化・異言語圏の外国人とコンテンツを通じて心を通わせることができることです。海外で東宝作品を上映する劇場に外国人が詰めかけ、超満員となった劇場のスクリーンに東宝作品のワンシーンが映し出される瞬間、そして上映が終わり、感動した面持ちで劇場から観客が出てくる瞬間は、何度立ち合っても強く心を動かされます。

 日本文化をこれほどまでに愛してもらえることに、日々深い感謝と感激を覚えつつ、これからも、世界中に夢と感動を届けられるよう、努力を重ねて行こうと思っています。

学生へのメッセージ

 多忙ななか、拙文をここまで読んでくださった忍耐強い後輩諸君に心から感謝申し上げるとともに、敬意を表します。感性が鋭敏な若いみなさんは、さまざまな物ごとに興味・関心を抱き、強く惹かれ、衝動に突き動かされる日々をお過ごしのことと思います。私は、そのどれもが意味のある衝動だと思います。衝動に突き動かされるがままに生きてきた私は、卒業し、就職し、結婚し、2児を授かりましたが、今改めて過去を振り返り、強くそう思います。失敗して落ち込んだ日々も、今振り返れば、「今日」を形づくるために必要不可欠な重要な1日だったと思います。

 「みなさんには無限の可能性が広がっている」と言いたいところですが、それは幻想です。冷たく突き放すようですが、何ごとも有限でしょう。しかし、努力で限界を押し広げることはできます。みなさんには、その作業をするための時間と機会が多く残されているのです。自分の境遇が恵まれなくても、過去の自分が形づくった今日の自分に満足がいかなくても、限りある時間のなかで、がむしゃらに、ナニクソの精神で、「正しい」と思えること、興味を持てること、自分の「本分」と思えることに、まっすぐに取り組んでほしいと思います。自分の可能性を強く信じて一歩踏み出してみてください。将来、その一歩の先のどこかで、みなさんとお会いできることを、とても楽しみにしています。

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