甲南人の軌跡Ⅱ/宇佐美 明生/人生というキャンバスに自分らしい色を描こう。 | 卒業生の活躍紹介サイト | 甲南大学

人生というキャンバスに自分らしい色を描こう。

宇佐美 明生

Usami Akio

株式会社NTTドコモ 勤務
NPO法人あなたのいばしょ 経営

2011年 法学部卒

趣味・特技

問いをつくり、 迷わず行動すること

好きな⾔葉

人生はキミ自身が決意し、貫くしかないんだよ。

学⽣時代のクラブ・サークル

体育会ラグビーフットボール部/就活支援団体OBF(第 6 期代表)

『なんとなく』から脱却し、人生の経営者へ

 思い返せば、20歳までの私は、責任感も当事者意識もなく、誰かが決めたレールの上を歩いていたと思います。言い換えるならば、自分の人生でありながら「人生の従業員」でした。そんな私が、大学生活を通じて『自分が人生の経営者であること』に気づき、一歩を踏み出したエピソードについてお話しをします。

 1つ目のエピソードは、恩師である笹倉香奈先生との出会いです。笹倉先生の授業を初めて受けた時のことは今でも鮮明に覚えています。適度に張り詰めた緊張感に、徹底した準備を感じる講義内容。そして教育への熱量も、人としての謙虚さも感じる。自分を見返した時に『なんだこの圧倒的な差は!?』と衝撃を受けました。「先生から多くを学びたい」と考えた私は、笹倉ゼミ第1期生に応募し、幸いにもゼミに入ることができました。そしてゼミでは、刑事訴訟法に関する理論と実践だけでなく、学問以外でも大切な気づきを得ました。

 とある日のことです。先生と何気ない会話をしていた際、「私、“なんとなく”っていう言葉が好きではないんだよね~」という言葉がありました。この時、私は平然を装っていましたが、内心ドキッとしていました。『自分はなんとなく生きてないか!?』そう感じました。信念を持って挑戦している人の言葉には重みがあり、純粋にカッコいいと感じましたし、自分自身もそんな人間でありたいと強く感じました。思い返せば、先生のこの言葉に出会った瞬間から、本当の意味での私の大学生活がスタートしたのだと思います。

 2つ目のエピソードは、裁判傍聴です。ゼミで一度経験したことを契機に、時間さえあれば裁判を傍聴しに行くほど魅了されていました。『なんとなく』から脱却する必要性を感じていた私は「なぜこれほどまでに魅了されているのか?」を言語化できるまで自問自答していました。そして、自分が無意識に大切にしていた価値観に気がつきました。それは、「人生の分岐点に向き合うこと」です。裁判傍聴では、「なぜこんな悲惨な事件が起きてしまったのか」と、被告人に対して怒りの感情を抱くこともありました。一方で、自らの過ちに向き合いながらも、再び前に進もうとする姿に強く心が揺さぶられることもありました。どんな人であっても『人生の経営者』であることを痛感しました。

 3つ目のエピソードは、就活支援団体での活動です。就職先も決まり、「今後どんなことに挑戦しようか?」と考えました。そこで立ち返ったのは自分の大切にする価値観です。「人生の分岐点で貢献できること何か?」自ずと出た答えは、就活支援団体の立ち上げでした。自分のためではなく誰かのために、1人ではなく仲間とともに、寝食を忘れて必死に努力し続けた経験は、かけがえのない財産となりました。そして『自分が、自分の人生を、自分らしく、経営していること』を実感しました。

原体験から意味を見出し、道を決める

 私が就職活動を開始したのは2010年。リーマンショック以降不況が続き、就職氷河期と呼ばれた時期でした。今でも覚えているのが、当時キャリアセンター所長だった中井伊都子先生(現学長)の言葉です。「世の中にはピンチはチャンスという言葉がありますが、ピンチはピンチです!」そういった内容でした。この言葉を聞き「自分が納得できるまでしっかり備えよう」と決めました。

 就職活動は、自分自身と徹底的に向き合う貴重な期間。私が大切にしたことは『原体験から意味を見出すこと』です。かつての体験をいろいろと振り返る中で、裁判傍聴についても振り返りました。そこで脳裏に焼きついていたのは、とあるタクシー強盗殺人の事件です。就職活動が始まる前から「なぜこんな悲惨な事件が起きてしまったのか?」と考えており、私が見出した答えは「そこにお金があるから」でした。「現金なんてこの世からなくしてしまえば良いのに」そう本気で考えていた矢先に出会ったのが「打倒現金」をミッションとするクレジットカード会社でした。自分が実現したい世界と一致したため、迷わず選考を受けることにしました。

 ご縁があり、そのクレジットカード会社に入社しました。キャッシュレス社会を実現するために、カードが使える場所を開拓したり、会社の中期経営計画を策定したり、業界のルールを創ったりと幅広い経験をさせていただきました。2019年はキャッシュレス元年と言われています。日本を代表する企業と手を組み、キャッシュレス社会を実現するための潮流をつくることができたことは大きな喜びでした。一方で「入社時に実現したかったことは達成できた」「やりきった」と感じました。8年間、公私ともにお世話になった大好きな会社でしたが、次のチャレンジングな道に進むべく、卒業をしました。

 次に選んだ場所は、「人生の分岐点」を社名の由来とするITベンチャー企業です。社長は起業家で、エンジニア出身、そしてYouTuber。大企業では決して真似のできないスピード感で急成長する企業です。私はこれまで総合職としてキャリアを歩み、一定の成功体験もありました。しかし、ITベンチャーのマーケターに転身し、優秀なエンジニアやデザイナーとともに働くことで「自分には突き抜けた専門スキルがないこと」を痛感しました。健全な危機感を持ちつつ、努力せざるを得ない環境に身を置けたことは正しい決断だったと思います。

 現在は、非通信領域の強化を図るNTTドコモにエキスパート人材として参画し、1社目・2社目の経験を活かしながら、金融ビジネス基盤の企画/構築を担当しています。

 また兼業として、「あなたのいばしょ」というNPO法人を経営しています。創業者は大学生の社会起業家で、私とは10歳離れています。ただし、生き様や想いに年齢は関係ありません。『自身の原体験から意味を見出し、生きる道を定め、行動し続ける』彼を、私は心から尊敬しています。

 創業時から、「望まない孤独」を根絶すべく、24時間365日、年齢や性別を問わず、誰でも無料・匿名で利用できるチャット相談「あなたのいばしょ」を運営しています。創業からわずか半年で、多くの報道に取り上げられ、社会起業塾というNPOの登竜門にも採択されました。また一緒にチャレンジする仲間は500名規模となり、近い将来、日本最大級となっていく見込みです。今後も私のライフワークとして、ミッションを実現するために全力でチャレンジをしていきます。

すべての出来事は無色透明

 みなさんにアドバイスをできるほど、できた人間ではありませんので、最後に私が32年間の人生で得た最大の学びについて紹介をさせてください。

 それは、『すべての出来事は無色透明』ということです。みなさんの中にも、過去を振り返って、また現在において、喜びを感じたことや生きがいに感じていることがおありだと思います。一方で、人生のどん底を味わったことがある方もいるかもしれませんし、今後唐突に訪れるかもしれません。

 ただ、私が大切だと思うのは、繰り返しになりますが、『すべての出来事は無色透明』ということです。人生のどん底と感じる出来事も、その出来事自体は無色透明であり、自分が「どん底」と色づけしているだけなのだと思います。この考えができるようになってからは、「自分の人生というキャンバスにどんな色づけをしようか」と、毎日ワクワクできるようになりました。

 最後になりますが、私が大好きな岡本太郎の言葉をご紹介し、みなさんへの応援メッセージと代えさせていただきます。

『人間にとって成功とはいったいなんだろう。結局のところ、自分の夢に向かって自分がどれだけ挑んだか、努力したかどうか、ではないだろうか。夢がたとえ成就しなかったとしても、精一杯挑戦した、それで爽やかだ。』

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