甲南人の軌跡Ⅰ/柳谷 英信/半甲南漬け | 卒業生の活躍紹介サイト | 甲南大学

半甲南漬け

柳谷 英信

Yanagitani Hidenobu

伊藤忠商事株式会社 勤務

2006年 経済学部 EBA総合コース卒

趣味・特技

旅行

好きな⾔葉

学⽣時代のクラブ・サークル

半甲南漬け

 1996年に甲南中学校に入学したことが、私と甲南との出会いです。幼稚園から甲南に通っている学生は「甲南漬け」と呼ばれますが、私は中学・高校・大学と一貫して甲南で生活を送りましたので、「半甲南漬け」かと思います。中学時代からの友人は多く、彼らとは人生の半分以上を一緒に過ごしました。私にとっては、今でも非常に大切な人々です。

 甲南の友人は、一言でいうと「いいヤツ」。何があっても「ええやん!」で片づいてしまう、本当に気の合う仲間たちです。思えば、そんな楽しい仲間たちに囲まれていたので、学生時代は遊んでばかりでした。クラブにもサークルにも所属することなく、ただただ楽しく充実した学生生活を送っていました。今となっては、もっとスポーツを頑張っておけばよかったとも思いますが、それが唯一の後悔で、それ以外は最高の学生生活を送っていました。そんな仲間たちに囲まれて、どんなことがあっても「ええやん!」といって片づけられること、色んなタイプの人間がいても仲間になれることは、今の自分を形成する重要な要素になった気がします。

 決して勉強熱心ではなかった私ですが、EBA総合コースに入学し、2回生の夏から1年間、アメリカ・ニューヨーク州のUniversity of New York Buffalo校に留学する機会を得ることができました。どうせ行くならしっかりと現地で単位を取ってやろうと、留学前の事前準備期間は真面目に勉強に取り組み、また留学中の現地での1年間の学生生活も英語の授業についていくため必死になって勉強しました。たった1年間のアメリカ生活でしたが、その経験が自信につながり、また就職のときにも「国際的な仕事がしたい」という大きな決断につながった気がします。

 高校時代、大学進学の際に他校の受験も考えましたが、ちょうどそのとき、EBA総合コースの設置が発表され、海外留学への希望も強かったことから、そのまま甲南大学に進学することにしました。正直いうと、受験勉強より遊びを優先したという理由もあったですが…。しかし、今ではこの選択は正しかったと確信しています。当時、入学した学生の全員が留学するというコースは他の大学にはなかったと記憶しています。このようなコースを他校に先駆けて設置してくれた甲南大学には本当に感謝しています。

日本から世界に

 さて、先ほどアメリカでの生活が就職をする際の決断に大きな影響を与えたと書きましたが、それはどうしてなのか、少し詳しく書かせていただきます。

 まず、アメリカに行って思ったことは「自分はあんまり海外が好きではないな」ということでした。「なぜか?」。世界一経済大国のアメリカでも、ニューヨークのマンハッタンやロサンゼルス等の大都市は別にしても、田舎町に行けば何もない、けっこう不便な生活でした。食事の選択肢は少なく、サービスの質も決して高くない。車がないと行動の範囲は狭くなり、とくに娯楽が充実しているわけでもない。そんな生活のなかで思ったことは、「日本って最高やな!」ということでした。「国土の広さがまったく違うアメリカと比べてどうする!」という意見もあるかもしれませんが、いえいえ、イギリスでも同じような感想を抱きましたし、急速に発展している中国に行っても、花の都パリに行っても、いつも思うことは「日本って最高やな!」なのです。

 学生時代の海外経験から、「外から見た日本」を初めて体感し、「日本はこんなに最高な国やのに、何かイマイチアピールできていない気がする。よっしゃ、日本の素晴らしさを見せたろう」と、こんな風に思ったことが、「国際的な仕事」に就きたいという思いにつながりました。当時知識のあまりなかった柳谷青年は、国際的な仕事=商社という非常に短絡的な考えのもと、ほぼ商社に絞って就職活動をしました。今でも現在勤めている会社の面接でいったことを覚えています。「日本のおもてなしの文化はもっと世界に誇るべきだと思います。コンビニに行って、こんなに色んな味のポテトチップスが売っている国はないんですよ!こんなに店員さんが丁寧な国はないんですよ!そういう事をビジネスをとおして世界に発信したいし、それが金儲けにもつながると思う。日本人にとっての「あたり前」でビジネスができると思うんです」。今では「おもてなし」は滝川クリステルさんの専売特許になってしまいましたが、当時は本当にそう思っており、今も同じ思いで仕事をしています。

 伊藤忠商事に入社後は、繊維カンパニーに配属され、一貫してブランドマーケティング部で仕事をしています。端的にいうと、新しいブランドを日本市場に持ってきて、そのブランドの商売の拡大を行う仕事です。ブランドビジネスは「付加価値」ビジネスです。ブランドがつくことによって物の価値が上がり、お客さんに喜んでもらえる。ブランドをとおして、今あるものにプラスアルファの価値を加えて、新しい価値を日本に紹介し、日本をもっと豊かにできればいいなという思いで仕事をしています。この思いは入社当時から少しも変わっておらず、今後も変わることはないと思います。

甲南生のみなさんへ

 甲南の学生はみんなコミュニケーション能力に長けていると感じます。「コミュニケーション能力」という言葉はよく聞きますが、私が思うコミュニケーション能力とは、話がうまいとか、積極性とかではなく、「場の空気を読めること」だと思います。この能力は社会人になっても非常に重要で、職場での人間関係の構築、お客さんの懐に入れるかどうか、すべてにおいて重要な要素だと思います。当然、勉強して身につくような能力ではないので、子どもの頃からの、そして学生時代の普段の生活のなかで培われる能力だと思います。甲南生はこの「空気を読む力」の高い人が多いという印象を受けます。

 そして、先輩や上司やお客さんに可愛がられるタイプの人間が多いように感じます。「空気を読める人」は、自分から「自分は空気が読めます!」とはいわないと思うので、初対面でアピールすることは難しいかもしれません。しかし、話していればそれは自然と伝わるので、自信を持ってよいと思います。

 甲南にはどこかゆるーい空気が流れている気がします。学生同士でもOB・OGとでも、そして教授の方々とも、比較的フランクに話ができる環境だと思います。たとえば、私も初めて会った人が甲南出身と聞いただけでちょっと嬉しくなり、勝手に仲間意識を持ったりしてしまいます。そのような貴重な場所を活用して、普段からいろいろな人と話し、さまざまなことを吸収してください。そうして培った「コミュニケーション能力」は、社会に出てもきっと役立つはずです。

 大学時代は、若いうちで一番自分で自由に時間を管理でき、使うことのできる貴重な時機です。体力もまだまだあるはずです。「やりたい!」と思ったことは、全部やった方がよいと思います。いろいろなことにチャレンジしていろいろなものを見て、吸収してほしいと思います。こんなことを書けば叱られるかもしれませんが、親に出世払いの借金を申し込んででも、旅行に行ったり、いろいろなことにチャレンジしても許される時代だと思います。思いっきり学生生活を楽しんでください。

amazon