子育て期のワークライフバランスとジェンダー平等:男性の育児休業を中心に | KONAN Action for SDGs|甲南大学|甲南大学
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文学部 社会学科 教授 中里英樹

子育て期のワークライフバランスとジェンダー平等:男性の育児休業を中心に

 

本研究では子育て期のワークライフバランスとジェンダー平等を達成するうえで、必要な男性の育児休業の制度と実践のあり方を検討する。

  
 ここまでの調査で、日本における男性の単独育児休業取得者に対するインタビューから、育休中の父親が家事や子育ての主な担い手となり、新たな責任感や楽しい経験を得たことを明らかにした。しかし、これらの経験は、個々の意識、職場の支援、両親の対等な収入とキャリア、そして妻からの働きかけなど、特定の条件が揃うことに大きく依存している。この状況は、父親の単独育休取得がまだ少数派であり、孤独感などの困難も伴っていることを示している。

  

 北欧やドイツの事例分析と観察からは、これらの国において男性の育休取得が普通化し、父親が子育ての完全な担い手になる状況が増加していることがわかった。スウェーデンでは、パパ・クオータの導入や保育制度との組み合わせが、父親の単独育休を促進している。ドイツでは、制度上のパートナー月やパートナーシップ・ボーナスを通じて、父親の育休取得が当たり前になり、両親のワーク・ライフ・バランスが平等になる傾向が見られる。

  

 一方、日本では現在の育児休業制度が父親の単独育休取得や子育ての完全な担い手になることを促進するものになっていない。これには、母親だけが給付を受けることが可能な長期休業制度や、父親の育休取得が保育所入所の可能性を低下させるような保育所入所条件が影響していることも明らかにしてきた。

     

 今後は、ジェンダー平等に資する育児休業制度の確立およびその取得の実践の方策をさらに追究するとともに、自営業者、シングルペアレント、同性カップルなどを含むインクルーシブな制度の意義や実現の方策についても検討していく。

研究者紹介

中里英樹

文学部 社会学科 教授

中里英樹