環境中の有害物質の除去・分離技術に関する研究 | KONAN Action for SDGs|甲南大学|甲南大学
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理工学部 機能分子化学科 教授 岩月聡史

環境中の有害物質の除去・分離技術に関する研究

 私たちの身のまわりの環境中には、多かれ少なかれ人体に有害な物質が存在している。しかし、これらの「有害物質」のなかには、私たちの生活を豊かにしている様々な製品の製造過程に不可欠な物質も含まれている。我々の研究室(機能設計・解析化学研究室)では、このような有害物質を容易に検出することができ、さらに選択的に分離・回収して再利用に展開できる次世代多機能材料の創成をめざしている。

   

 例えば、ホウ素(B)の単体およびその化合物は、化学業界のみならず農業や医療分野分野等に幅広く使用されている一方で、我が国において「ほう素及びその化合物」は排出規制物質となっている。しかし、ホウ素化合物を含む水溶液(廃液等)からホウ素化合物(水溶性ホウ素)を回収・再利用し、かつホウ素を検出できる汎用性の高い技術は未だ確立されているとは言えない状況にある。我々は、水溶性ホウ素と反応すると色が変わる比色センサー部位を導入したハイブリッド機能樹脂を試作し、その機能評価を行っている。開発した樹脂は、中性pH付近で市販のホウ素除去用樹脂に匹敵するホウ素吸着能をもち、かつホウ素吸着に伴って樹脂色が大きく変化することがわかった。これらの結果は、本研究のハイブリッド機能樹脂がホウ素の新しい分離・検出技術になり得ることを示している。今後、ホウ素が吸着した樹脂からホウ素化合物を回収する条件の最適化と、樹脂の繰り返し利用可能な耐久性向上を検討することにより、水溶性ホウ素の分離・回収・検出のすべてを同時に達成できる新材料の創成につながると考えられる。

   

 このように、環境中に放出されれば有害な物質でも、それらを検出し、選択的な分離・回収により再利用することができれば、「人にも環境にもやさしく、豊かな社会生活を享受できる物質資源循環型の持続的発展性のある社会」を実現する一助になると考えられる。

研究者紹介

岩月聡史

理工学部 機能分子化学科 教授

岩月聡史