自他の感情調整に関する研究 | KONAN Action for SDGs|甲南大学|甲南大学
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文学部 人間科学科 准教授 野崎優樹

自他の感情調整に関する研究

ネガティブな感情を経験した際、私たちはしばしば自分自身で、あるいは他者の力を借りて、その感情の調整を行う。この感情調整 (emotion regulation) は、自分自身の怒りや悲しみを和らげようとする「自己の感情の調整」に加えて、怒っている相手を宥めたり、悲しんでいる相手を励ましたりするといった「他者の感情の調整」の2種類に大別できるが、この両面から心理学研究を推し進めている。具体的には、感情調整を実行する心的過程を説明する情報処理モデルの提案や、どのような感情調整方略が、いつ誰に対して効果的に働くのかを実証的に明らかにする研究に取り組んでいる。これらの研究は、従来対立関係にあると考えられていた「感情」と「知性」を統合し、感情が関わる知的な心の働きを明らかにしようとする「感情知性 (emotional intelligence)」に関する研究として位置づけられ、関連分野とも連携しながら、人の心の働きを包括的に解き明かしていくことを目指している。

   

 また、近年の技術進歩が著しい対話型AIの活用が期待される代表的な分野の1つが、コミュニケーションを介した感情調整である。この技術を応用することにより、人々の適切な感情調整を促進させ、メンタルヘルス不調を予防する資源を拡充することが可能となるため、社会で大きな注目の対象となっている。しかし、対話型AIとの交流に関しては、「対話型AIに過度に依存してしまうと、その人が自分の経験や行動を自らの意志で決定していく自律性を損ねることにならないか」といった、AIと交流する人の心理面に関する懸念も見られる。このような懸念が払拭され、「人々が対話型AIを上手に活用して感情調整を行い、お互いが関わり合いながら、生き生きと暮らす社会」を実現するための研究にも取り組んでいる。

研究者紹介

野崎優樹

文学部 人間科学科 准教授

野崎優樹