甲南人の軌跡Ⅲ/原邦彦/新しい時代を創る皆さんへ | 卒業生の活躍紹介サイト | 甲南大学

新しい時代を創る皆さんへ

原 邦彦

Hara Kunihiko

KDDI株式会社 勤務

1997年 理学部物理学科卒/ 1999年 自然科学研究科 物理学専攻 修士課程修了

趣味・特技

テニス、野球、 ランニング・ 体幹トレーニング

好きな⾔葉

智、仁、勇三者、天下之 達徳也(智、仁、勇の三 者は、天下の達徳なり)

学⽣時代のクラブ・サークル

テニスサークル

いま想う、恩師からいただいた言葉

 学生と呼ばれなくなり、はや20年以上が経ちました。そんな長い時間が過ぎても覚えていることは、大学院修士課程に在籍していたころを含めてお世話になった恩師の言葉です。

 恩師は、一般の民間企業で研究職を長くお勤めになった後、教授としてお越しになっていました。当時研究室ができたばかりのころで研究に関する設備が整う前だったため、論文を読み合わせ、その内容を実験してみることが多かったと記憶しています。新たなことを研究するということはあまりできませんでしたが、どこか楽しさを感じる研究室でした。そんな中、恩師にいただいた言葉が、『過ぎたこと、過ぎた時間も大切だけど、最も大切なのはいま』です。恩師には、「確かにそうですよね。」などと返答しておりましたが、当時の私は、過去やいまの違いを意識することもなく平凡に毎日を過ごしており、その言葉の意味がわかるようで、あまりわかっていませんでした。もっと言いますと、あまり深く考えていなかったのだと思います。

 今回、このような文章を執筆することになり、学生時代のことを思い出そうとさまざまなタイミングでいろいろなことを考えてみました。いつも一緒にいた友人のこと、けっこう真剣に練習したサークルのことなど、思い出すことはたくさんありました。そんな中でも、はっきりと具体的に思い出されたのが、恩師からいただいたこの言葉でした。

 ここで少し話が変わりますが、年齢が上がれば上がるほど、時間が経つのが早いと感じることはありませんか? 幼いころは、ほぼすべてのことが初めて接する、初めて経験することで、そのすべてにおいて感じることや考えることがたくさんあるそうです。一方、年齢が上がり経験を積み重ねることで、その都度感じることや考えることが少なくなるそうです。ようは、慣れるということですが、その分、新たなことを経験するときに感じるワクワク感が減ってしまっていると思いませんか? しかし、過去の経験があるからこそ、スムーズに物事を進めることができたり、困難なことを予測し先に手を打つことができたりします。また、過去の失敗があるからこそ、同じ失敗を起こさないため対策も打つことができます。つまり、『過ぎたこと、過ぎた時間も大切』ですよね。

 いま私が働く企業では、お客様とともにワクワクを感じる未来(おもしろい方の未来)へ、お客様とご一緒できるよう常に考えています。ワクワクを感じる未来は、全員が初めての経験であり、試行錯誤の繰り返しかもしれません。失敗することも、やり直すことも何度もあります。だからこそ、いまが大切なのかもしれないと考えるようになりました。日々の中では、やりたいことができるわけではなく、また、簡単でないことやうまく行かないこともたくさんあると思います。私も仕事の中ではそう感じることばかりです。ですが、お客様や仲間にワクワクを感じてほしいと思うことで、乗り越えてくることができたと思います。

『最も大切なのはいま』

 今回、思い出すことができたこの言葉を、これからも大切にしていきたいと考えています。

仲間とともに守るのは世界

 皆さんは通信と聞いて何をイメージしますか? やはり多くの方はスマートフォンでしょうか。その他としては、インターネットやSNS などでしょうか? 私が会社に勤め始めたころの通信といえば携帯電話です。多くの方々が携帯電話を持ち始め、どこにいても相手と繋がることができることに、とても驚いた記憶があります。その後、携帯電話は通話だけではなくメールが使えるようになり、さらにWEB サイトが閲覧できるようになりました。パソコンで利用していたメールやWEB 閲覧が、手の中にある小さな機器で使えることに感動を覚えました。その後さらに発展し、いまでは皆さんが日々利用するスマートフォンが出てきました。スマートフォンが変えた世界は皆さんもよくご存じですよね。皆さんのアイデアや工夫でこれからさらに発展し、世界は変わっていくと思います。また、車やドローンなどさまざまな機器に通信の機能がつくことで、高齢化する社会でも多くの方々に、より良い生活をお届けすることができると思っています。

 これらスマートフォンや多くの機器は、インターネットという誰もが利用できる通信環境に繋がっています。誰もが利用できるからこそさまざまな世界が広がるのです。一方、法を守らず、他人に迷惑をかけるような行為を行うサイバー攻撃が年々増えています。これからの世界の発展を止めないためにも、これらサイバー攻撃を防ぐセキュリティ対策が重要となります。私は、いまこのセキュリティの領域を中心に仕事をしています。

 皆さんは、セキュリティといえば、何を思い浮かべますか? ホームセキュリティや警備・警護などの物理的なセキュリティもありますよね。私が関わるセキュリティはインターネット上のセキュリティ(いわゆるサイバーセキュリティ)です。サイバー攻撃は、他人に成りすまし個人情報を不正に使用するような攻撃から、国や金融、病院など生活に欠かせない事業体のシステムを攻撃し、社会インフラを止めてしまうような攻撃まで幅広く存在します。

皆さんがニュースなどで目にするものは、氷山の一角でしかありません。世界で起こる戦争や紛争、先進国トップの発言や行動など世界情勢によっても、サイバー攻撃の頻度や対象は変わります。また、これらサイバー攻撃の手法は、どんどん高度化しています。

 私の仲間たちは、新たな技術や攻撃手法を調べ、対策を考えます。また、攻撃を受けた企業からの依頼に基づき、発生内容を調査し影響範囲を特定しています。私は、そんな仲間たちからの情報をもとに、お客様の現状をヒアリングし、お客様のビジネスに沿った対策の提案を行っています。初めて耳にするような事象も多く、いつも学ぶことから始まる日々ではありますが、高い専門性を持つ仲間たちと力を合わせ、これからも世界の企業を守り、社会の発展・成長を支えていきたいと思っています。

私が大切にしている3つの言葉や考え方

 私が社会に出た約20年前と、学生の皆さんが社会に出るこれからとでは、変化していることがいくつもあると思います。働く人と会社との関係や人種や性別などを超えた多様性への理解など。皆さんからしますと、下記3つの言葉やメッセージは、「とても古い言葉や考え方」かもしれません。そのため、皆さんにとってなじみのないものかもしれませんが、新しい時代を生きる皆さんの参考になれば幸いです。

 1つ目は、「凡事徹底(ぼんじてってい)」です。意味は、当たり前のことを徹底的に行うことです。

 よく例示されるのは、メジャーリーガーであったイチローさんです。生まれつき才能があったからではなく、当たり前のことを他の人より「徹底的」にやり切ったからこそ得られた結果だと言われています。イチローさん曰く、「手の届きそうな目標を設定すること」や「またやりたいなと思うようなワクワクする気持ちを作り続けること」、これら2つが大切だそうです。ちなみに、そんなイチローさんの言葉で私が好きな言葉は、「小さいことを重ねることが、とんでもないところに行くただ1つの道だ」です。

 2つ目は、「中庸(ちゅうよう)」です。皆さんは、中庸という言葉をご存じでしょうか?

 偏りがなく、いつも変わらないといった意味の言葉です。つまり、どちらか一方に偏ることがなく、バランスのとれた状態を指しています。日々の忙しさにより、ついつい目の前にあることだけで、偏った結論を導いてしまうようなことはありませんか。中庸を意識することで、冷静に現実を見つめ、何が大切なのか客観的に分析し、もう少し様子を見て判断することができると思います。

 3つ目は、「主語を相手に置く」です。これは、私がいつも心がけていることです。サークルや部活、研究室での活動において、周りの人たちに助けてもらうこと、力を合わせてやり遂げることはよくあると思います。仕事においても同様なことがあります。まず、1人で仕事を成し遂げることは素晴らしいことです。社会に出ると、その力をつけるのが一歩目になります。次のステップとしては、自身が持つノウハウを周りの人たちに伝え、多くの方々に協力を得ながら、もっと大きな結果に繋げることを求められます。一方、人の考え方や目指すゴールはさまざまであり、時々の事情も異なります。そんな中でも他の人の協力を得るには、相手を知り、理解する。そして、自分を知ってもらい理解してもらうこと。そのうえで、互いを尊重し認め合うことが重要だと考えています。尊重し認め合うことは簡単ではありません。物事がうまくいかないときこそ、自身が一歩下がり、相手を尊重して考えることをお勧めします。

 これからの社会は、新しい技術により、まだまだ発展し便利になっていきます。そんな新時代を創るのは皆さんです。どんな新時代を描くかは1人ひとり異なると思いますが、自身を信じ、臆することなく一歩ずつ前に進んでください。壁にぶつかったとき、迷ったときに、これらの言葉を思い出していただけますと幸いです。

 最後までお読みいただきましてありがとうございました。皆さんのこれからの人生が広がり、豊かになることを願っております。

発行日:2023年3月30日

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