甲南人の軌跡Ⅲ/後藤正巳/人それぞれの生き方、 信念を持って | 卒業生の活躍紹介サイト | 甲南大学

人それぞれの生き方、 信念を持って

後藤 正巳

Gotou Masami

甲南大学履修証明 プログラム履修生 (リカレント教育履修生)

1982年法学部卒

趣味・特技

スポーツ観戦(野球・ ラグビー・サッカー)、 ゴルフ、旅行 (史跡名所旧跡・ 博物館・美術館巡り)

好きな⾔葉

初心忘るべからず

学⽣時代のクラブ・サークル

軟式野球同好会

人生の節目・正念場

 甲南大学での学生生活で学んだこと、それは、「好きなこと・やりたいことができる」ことが一番幸せであるということでした。

 私は子どものころから野球が好きでやってみたいと思っていたのですが、入学した中学校には野球部がなく、友達が入るからと仕方なくバスケットボール部に入部しました。一番やりたかった野球はできませんでしたが、それでもバスケットボール部の活動には一生懸命取り組みました。進学した高校には野球部はありましたが、中学校で野球をしていなかったことから自信がなく、再びバスケットボール部に入部しました。しかし、結局辞めてしまい、高校の3年間は人生で最もだらけたものになりました。

 「ずっとやりたかった野球がしたい。」甲南大学に入学した私は、中学・高校で野球経験(特に硬式)のない自分でもやれそうな軟式野球同好会を見つけて入部しました。そこで好きな野球にようやく打ち込めるようになったことも幸せでしたし、野球同好会の先輩・同級生・後輩たちと楽しく充実した4年間を過ごすこともできました。特に同好会の同級生やその友達たちと国鉄(現在のJR)の周遊券を使って旅行したり、甲子園球場のタイガースショップでアルバイトをしたりと楽しい思い出がいっぱい残っています。

 このように大学生活を謳歌していたのはいいのですが、卒業後の進路については何も考えていなかったといっても過言ではありませんでした。教職課程を一応取っていましたので、4年次の5月に教育実習で母校の高校に2 週間行きました。高校2年生のクラスを担当し、生徒たちとも楽しく過ごすことができたことで、急に教員採用試験を受けようと思い立って準備を始めました。しかし7月の試験までわずか1 か月ほどしかなく、当然のことながら不合格になりました。その時はあまり悔しさもなく、その後企業の採用試験を受けて内定をもらい、夏休みに友達と北海道一周旅行に行きました。そんな9月のある日、「自分の人生は本当にこれでいいのかな?」とふと疑問が湧いてきたのです。「やっぱり教師を目指したい」、そう考えた私は、そこから来年の採用試験に向けて、卒業までの約半年間猛然と勉強をしました。おそらく人生で一番勉強したと思います。小・中・高・大学と特に自分の強い意志もなく進学してきた自分が初めてはっきり目標を持って取り組んだ、人生の「節目・正念場」だったのです。

 皆さんの今後の人生には、いくつかの大きな節目・正念場があります(留学・就職・結婚・子育て・転職・起業など)。1つひとつの小さな節目で頑張れる人は、大きな節目で必ず頑張れます。

 私のこの時の決断は無謀な挑戦だったかもしれませんが、とにかくやってみることが大変大事だと感じました。もしこの時この決断をしていなかったら(もちろん違う人生があったのですが)、後悔していたと思います。「好きなこと・やりたいことができる」これが一番幸せなこと。やらずに終わるより、結果が思うようなものではなくても、とにかくやってみることが大事です。

 見逃し三振ではなく、空振り三振の方が、必ず次に繋がると信じています。

「人」が財産

 大学卒業後に会社に1年間務め、教員採用試験に合格して転職しました。その後神戸市の中学校で社会科の教員として38年間勤めました(現在は退職しています)。

 入社1年目、仕事をしながらの採用試験勉強はほとんど時間が取れず、焦りました。会社の仕事は嫌ではなく、会社の人たちもいい人ばかりでしたが、「心ここにあらず」でやっているのは精神的に辛かったです。一方で、企業での経験は、その後の教員としての仕事にプラスになりました。例えば、教員は大学新卒でいきなり「先生」と呼ばれます。これは「自分は偉い?」と勘違いする原因となりかねません。企業では「新卒」、「新人」と呼ばれ、厳しく指導されるのが当たり前ですし、取引先やお客さんに頭を下げたり、適切な挨拶など営業の基本を最初に叩き込まれました。この経験を通じて「初心忘るべからず」…謙虚で真剣な気持ちが大切だと思いました。

 また、教員の仕事を通じて「一期一会」の大切さに気づきました。教員になって初めて学年総務を担当した時(40 代後半)、卒業式直後に「この子たち(卒業生)は自分の大きな財産だ」と思えたのです。彼らにとっては中学校3年間も大事ですが、卒業してからの方が時間も長く、大事なのではないかということです。

 この仕事では本当に多くの出会いがありました。私自身教員生活38年間で12,000人位(部活動や他学年で関わった人も合わせると20,000人を超える)の生徒と出会いました。もちろんそのすべての生徒を覚えているわけではありませんが(相手も同様に)、13歳から50歳まで(退職時)の人と知り合いであるという仕事は、他にはなかなかないと思います。これが教員という仕事の一番いいところ・醍醐味だと思います。中学校で出会った彼らの卒業後の成長や活躍を願い、出会いや連絡を大切にしています。同窓会で会ったり、街で偶然出会ったり、食事や飲みに行ったり、部活の試合や発表会の応援に行ったりできることが幸せです。もし私が教員になれていなかったら、勤務校や所属学年・クラス等が少しでもずれていたら出会えていなかった人たちです。そう思うと、人との出会いを大切にしなければならないと改めて思うのです。

 さて、現在(2022年10月)、国際情勢は予断を許さない状況です。私は社会科の歴史の授業で、第二次世界大戦の学習のまとめとして「映像の世紀⑤世界は地獄を見た」(NHK)のDVD を見せて、感想を書かせていました。その内容は、過去の映像の中での出来事ではなく、今現在実際に起こっていることです。そして歴史の最後の授業で3つの格言を黒板に書き、生徒に考えてもらっていました。

* 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。」(オットー・フォン・ビスマルク、ドイツ・プロシアの宰相)

* 「我々が歴史から学んだことは 『我々は歴史から何も学ばなかった』ことである。」(広島市内の真言宗大谷派の寺院の門前に書かれていた言葉)

* 「誤解は争い(戦争)を生み、理解は平和をもたらす。」(NHK シルクロードの最終回より)

 

 皆さんも一度これらの言葉の意味をよく考えてみてください。

「思うようにはいかない、やった通りにしかならない。」

 学生の皆さんへのメッセージとして、2つのお話を引用させていただきます。

■れんが積み(企業の入社前研修の資料より一部引用)

 ある時1人の老人が道を散歩していました。しばらく歩いていると、石工がれんがを積んでセメントで固めていました。そこで彼はその石工に向かって尋ねました。

 「あなたは今何をしているのですか?」

 するとその石工は「見ればわかるでしょう。わしはれんが積みをしているんですよ。

 2 ~3メートルばかり先にまた同じ作業をしている石工がいました。彼はまた同じ質問をその石工にしました。
 「わしは塀(へい)を作っているんでさあ。」と答えました。

 4 ~5 メートル行くとまた石工が同じ作業をしています。彼はこの第三の石工にも同じ質問をしました。すると彼は答えました。

 「私は教会を作っているんですよ。」と。

 話はこれだけです。しかし、ここで考えてみてください。3人の石工は表面にあらわれた動作だけを見ればまったく同じです。しかし、その気持ちの持ち方が3人とも違っています。

 つまり第一の石工はただ型通りれんがを積んでいるだけで「勤務時間中働いていれば賃金はもらえる。」という考えでしょう。

 第二の石工は「この1つ1つのれんがを積み重ねることによって、立派な塀を作り上げることができる。」という考えのもとにれんがを積んでいたのです。

 さらに第三の石工は「現在やっているこの単純なれんが積み作業も、やがては塀となり、さらには立派な教会となり、そこには何百という礼拝者が敬虔な気持ちでおまいりするようになる。」という気持ちで、その日の来るのを想像しながら毎日れんがを積んでいたからこそ、それが答えとなってあらわれたのです。

■「失敗」は「失敗」ではない(高田明さん講演会より一部抜粋)

 以前、「ジャパネットたかた」の元社長、高田明さんの講演を聞く機会がありました。

 長崎県の平戸出身で、大学卒業後は地元で小さな電気店を継ぎ、後に佐世保市で「カメラのたかた」を開店し、その後「通販業界」に進出し、大企業に成長させた人です。その話の中で彼は、「自分は今まで失敗をしたことがない。」と話されていました。

 「そんなことはないやろ。」「誰でも1回は失敗しているはずだ。」とみんな思うはずですが、本人は「これは嘘ではありません。」ということでした。彼によれば、「結果として物事がうまくいかない、うまくいかなかったことは何度もありましたが、それに対して自分はいろいろと取り組んだ結果うまくいかなかったのであって、これは失敗ではなく、試練なのです。次への課題となる試練であって、いろいろとやったこと(努力したこと)は自分の力になり必ず後に役に立ちます。何もしないでうまくいかなかったときが失敗です。」

 彼は仕事だけでなく、何をするにもこの考え方でいろいろ工夫して取り組んできたそうです。

 

 どちらの話も共通しているのは、「心(気持ち)の持ち方」ですね。前向きな発想で先を見据えた考え方ができれば、高いモチベーションで物事に取り組めるし、あまり苦にならないと思います。

 人生はすべてが思うようにいくわけではありません。やった通りにしかならないのです。結果はしっかり受け止めて、空振り三振を気にせず挑戦してほしいと思います。

 最後にもう1つ格言を紹介して終わりにしたいと思います。

 

 「世界を破壊するのは邪悪な者たちではなく、何もせず彼らを見守る者たちだ。」(アインシュタイン)

発行日:2023年3月30日

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