ラーニング・アシスタント

ラーニング・アシスタント
先輩学生による受講生の学習支援

ラーニング・アシスタント(LA)制度

概要

アクティブラーニング型授業の活性化を目的とし、2015年度よりLA制度を発足しました。本学のLA制度は「先輩が後輩にアドバイスを与える、学生参加型の学習支援」であり、以下の3つの種別での活用を行っています。

実績としては、各学期20科目程度の授業でLAを活用いただいており、常時100名程度のLA学生が活動しています。LA学生への研修は各学期において「導入研修」「フォローアップ研修」と2回ずつ開催しており、サポート体制を整えています。

また、LA学生を中心とした学習支援活動を行う学生団体である「ラーニングサポートチーム(LSチーム)」が存在します。LSチームは、LAとしての活動ではなく、新入生向けの相談会や新しくLAとして活動する学生向けの研修企画など、幅広い活動を行っています。

種別A 授業科目において、グループワーク等のファシリテーション、質疑への対応等
種別B 実験・実習科目において、技術や知識面での支援、実験や実習による学習が効果的になるためのアドバイス等
種別C 授業で課される課題レポート等について、基本的な文章の書き方や構成についてのアドバイス等

事例紹介

種別A:ベーシック・キャリアデザイン、共通基礎演習(千葉美保子先生)

◆教員インタビュー

LA制度活用の狙い キャリア創生共通科目「ベーシック・キャリアデザイン」は1年次から自分自身のキャリアについて考える授業です。担当するクラスでは、ペアワーク、グループワークやプレゼンテーションを通じてコミュニケーション力も高めながら、キャリアデザインの基礎形成を目指しています。また、導入共通科目「共通基礎演習」では、8学部1学環すべての学部学環学生が互いにコミュニケーションを取りながらアカデミックスキルを学び、そしてグループを固定したプロジェクト学習を通じて、協働する力を高めます。
大規模かつアクティブラーニング型授業であるこれらの科目において、LAの存在は不可欠です。複数のLAが、教員と協力しながら授業運営に携わることにより、大規模授業でありながらも受講生に対して手厚いサポートが可能となっています。

実際の効果 受講生にとって、先輩であるLAが仲介者として授業に介在することにより、従来よりも授業やグループワークにストレスなく参加することが可能となっていると思います。LAの存在は、受講生の学びの意欲向上につながっていると実感しています。例年、多くの受講生が「先輩のように今度は自分が後輩をサポートしたい」とLAを希望してくれています。LA自身にとっても、授業を運営する側として関わることで、主体的・能動的に取り組む姿勢が涵養され、コミュニケーション能力や課題解決能力、協働力の向上がみられています。
「ベーシック・キャリアデザイン」ではLAによる授業内企画の検討・実施、「共通基礎演習」ではプレゼンテーション作成の際のアドバイスや発表時のフィードバックなど、各科目では、グループワークのサポートに留まらず、LA自身の経験や知識を発揮する場を設けています。
LAでの経験をきっかけに、ラーニングサポート(LS)チームの活動など正課外教育にも積極的に取り組む学生も多く、ラーニングサポートサーティフィケイトへのエントリーも増加しています。

◆LA学生インタビュー

甲南大学 経済学部 馬場一瑛 さん
甲南大学 文学部 加古絵美莉 さん

LAをはじめたきっかけ

馬場僕は1年生の時にベーシック・キャリアデザインの授業を受講したのですが、2週目の授業からLAさんがサポートに入ってこられました。その活動を見て、気づいたらその授業が終わった後に担当教員にLA活動をしたいと相談に行っていました。

加古私は1年生の時に共通基礎演習の授業を受講し、最後の授業に次年度のLA募集があったので、当時課外活動を特にしていなかったことによる漠然とした不安もあり、一歩踏み出してみようと応募しました。

馬場僕は将来の進路として、サポート活動に関わりたいという思いがあるので、その思いもあってすぐにLAをやりたいと感じたのかもしれません。あとは、空きコマを有効活用してサポート活動ができるというのも魅力的でした。

加古私はもともと人見知りだったので、LA活動を通してコミュニケーション能力や人前で話す力をつけたいと思いました。また、教職課程も取っているので、傾聴スキルなどもLA活動を通して磨きたいと感じました。

LAとして活動した感想 加古私はLA活動を通して、授業外での受講生とのつながりが生まれたことがよかったです。その分、大学にいる際は普段から見られているという意識も上がっています。(笑)
あとは、きっかけと重複しますが、やはりLA活動を通して話の聞き方、切り出し方などのスキルが向上し、教職課程の勉強との相乗効果を実感しています。特に、LA研修内での「質問ワーク」は教職課程の現場実習等で非常に役立ちました。

馬場僕は受講生一人一人に合わせたサポート活動が難しいと感じました。LA活動を始めた際は、まず受講生に話しかけることを一番意識していましたが、受講生ごとにニーズが異なることを実感し、今はサポートが必要なグループや受講生を見つけるということを意識しています。特に、最近はLAとしての活動期間が長くなってきたこともあり、受講生だけでなく、一緒に勤務しているLAへのフォローも大事にしています。

加古私はLAを始めたことをきっかけに色々な活動に幅が広がりました。千葉先生にお声がけいただいたのですが、入学前スクーリングやオープンキャンパスでの「教えて甲南生」(在学生による個別相談)など様々な活動にチャレンジし、その活動においてもLAで培った能力が活かされていると感じます。現在は、LAを中心とした学内の学習サポート活動を行う学生団体「ラーニングサポートチーム(LSチーム)」の統括役を務めており、先輩の馬場さんが取得されたラーニングサポートサーティフィケイト1級を目指して頑張っています。
馬場さんは1級取得のためにどのような活動をしましたか?

馬場僕が特に取り組んだのは、後輩LAの支援です。特に千葉先生の授業で勤務するLAですが、1年生の前期が終わったタイミングでLAに応募をしても、本格的なLA活動を始められるのは2年生の前期からになることが多く、その半年の間にモチベーションが薄れてしまう学生がいることに強く課題感を持っていました。そこで、LSチーム内でメンバーに声をかけ、LA活動の見学制度の確立やLA勤務が開始するまでに相談会を開くなど、継続的なサポート体制を整えることに注力しました。LSチームの研修班リーダーは後輩にバトンを渡しましたが、引き続き後輩のサポートを継続したいと思っています。

種別B:ナノバイオラボベーシックB(臼井健二先生)

◆教員インタビュー

LA制度活用の狙い ナノバイオラボベーシック Bでは、実験が不慣れな学部1年生に、世界中のどの大学においても学部では実験しないようなめずらしい、小型タンパク質(ペプチド)の化学合成を一人一人行ってもらっています。一人一人がしっかり実験の内容や操作を理解する必要があり、この合成を成功させるためにはきめ細かな教育、マンツーマンに近い指導が必要です。私とティーチングアシスタント一人では少人数の実験といえども、なかなか目が行き届かず、それを大いにサポートしてくれるのがLAの存在と考えています。

実際の効果 例年、受講生にとって、LAは「頼れる先輩」というイメージのようで、わからないことがあれば気軽に質問し活用してくれています。そのおかげで高度で充実した内容の授業を毎年高水準の質を維持しながら提供できています。また、本授業内容以外にも、他の授業に関する質問ができたり、3年生以降の研究室配属先選びなどの参考にもなったりしているようです。LA自身にとっては、授業を進める一員として責任感が芽生えたようで、進んで当該授業の復習を行ったり、業務内容を把握しようとしたりしており、社会人への準備として非常に教育効果が高い制度だと常々実感しています。また研究室での研究とも関連が深いため、自身の研究への理解にも役立っているようです。ラーニングサポートサーティフィケイトへの関心も深まったようで認定者が増えつつあります。

◆LA学生インタビュー

甲南大学大学院 フロンティアサイエンス研究科 寺尾泰晟 さん

LAをはじめたきっかけ 私は入学当初、講義や学生実験など大学での学びについていけるかとても心配していました。そんな時、先輩に大学での勉強方法や、実験操作をアドバイスしてもらうことで、安心して勉学に励むことができました。この経験から、自身と同じように不安を抱えた受講生のサポートを行うことで、安心して学んでもらいたいと思いLA活動を始めました。また、受講生に教えることで自分自身の理解も深まると思い、自己成長の意味でもLA活動を始めてみようと考えました。 

LAとして活動した感想 LAとして実験の原理や操作を受講生に説明し理解してもらうのは、とても難しかったです。そのため、授業内容や実験操作などを予め復習し、理解を深めておくことで、わかりやすく簡潔に説明することを心掛けました。LAとして実験の準備を行う際には、受講していた時には分からなかった内容もよく理解することができました。改めて学ぶことで、自身の研究にも取り入れることのできる知識や情報を得ることができ、自分自身の成長につながったと実感します。さらにLAの活動を通して、ラーニングサポートサーティフィケイト3級にも認定されました。これらの経験は、就職活動の際にもアピールポイントとして役立ち、今後の人生においても大いに役立つと感じています。 

種別C:経済入門Ⅰ(高龍秀先生)

LA制度活用の狙い LA制度を活用する以前、学部生が大学入学後にアカデミック・ライティングについて学ぶ機会がなく、大学でのレポート作成に困る学生が見られました。そこで、経済学部では、1年前期の必修科目である「経済入門Ⅰ」において、全1年生を対象に、大学のレポート作成に関するサポートをLA制度を活用して実施してきました。2~4年生のLAが最終提出前のレポートを読んでアドバイスをする事で、レポートを作成するポイントを学ぶことを狙いとしています。また、LAには勤務前に研修をしっかり実施しています。特に、まずよくできている所を褒めて、その後に改善点をアドバイスし、20分の時間を通じて1年生の学びのモチベーションをあげて欲しいと伝えています。

実際の効果 ライティングサポート(WS)を受ける受講生の割合は84%と比較的高い数値です。サポートを受けた後のレポートを確認すると、特に誤字脱字の修正、段落の作り方の修正、長すぎる文章を区切ること、脚注の付け方、引用の仕方などで改善が見られます。WS実施後に、受講生へのアンケートを実施していますが、WSに関する満足度は非常に高い数値です。LAのアドバイスを基に、初めて大学のレポートを完成できるという1年生の達成感もあるようです。LAにとっても、具体的な学びの面でサポートする経験でき、1年生の意欲的な姿勢を見ることで自身の学びの意欲向上にもつながっていると感じます。

成果

授業改善アンケート(2023年度)

Q.この授業を通じて、知識が深まった、能力が高まったと感じますか?
5. そう思う 4. どちらかといえばそう思う 3. どちらとも言えない 2. あまりそう思わない 1. そうは思わない

Q.総合的に判断して、この授業は満足できるものでしたか?
5. そう思う 4. どちらかといえばそう思う 3. どちらとも言えない 2. あまりそう思わない 1. そうは思わない

LA学生アンケート(2023年度)

Q.本学期のLA活動を通して自身の成長につながったと感じますか。

ラーニングサポートチーム(LSチーム)

 LSチームは、「企画班」「広報班」「研修班」「交流会班」に分かれており、LAだけではない学習支援活動、学生企画研修、他大学の学習支援サポーター学生との交流イベント、LSチーム内の交流会、SNSを用いた活動発信など多岐にわたる活動を行っています。また、本学ではこのような学生の積極的な活動を「KONAN サーティフィケイト」制度により、評価・認定しています。