
冤罪(えんざい)が疑われる刑事事件の調査や弁護の支援を無償で行う「えん罪救済センター」の記事が、共同通信「47NEWS オピニオン」に掲載されました。
「47NEWS」は全国52の新聞社のニュースと共同通信の内外ニュースを束ねたニュース配信サイトであり、「オピニオン」は、様々なテーマの専門家の投稿や共同通信の編集員らが執筆した原稿を掲載するコーナーです。
記事では、アメリカで1990年代から広がった組織的に冤罪の救済を目指す活動「イノセンス・プロジェクト(IP)」について触れ、1,800人を超える冤罪が証明されその中に156人もの死刑確定者のいたことが社会に大きな衝撃を与え、そうした活動が世界各地に広がっていることが紹介されました。
アメリカでは、この活動によって発見された多数の冤罪事件を分析することで冤罪原因が明らかになり、目撃者の識別手続きや取り調べの録音録画、司法取引の手続きや科学的捜査の改革など、捜査手法が改善による刑事司法改革が進行中です。また冤罪を訴える人に有罪判決後のDNA鑑定の権利を認め、鑑定のための生体資料の保管・保存を法律上義務づけた州もあります。一連の活動は、冤罪被害者を救済しただけでなく、刑事司法に革命をもたらしました。
日本には、公的機関が冤罪原因を検証する仕組みがなく、救済にあたる専門家のネットワークもありません。冤罪を晴らすための証拠を入手する制度も不十分で、いかなる支援も受けられない事件がどの程度あるのかさえ分からない現状です。IP日本版のえん罪救済センターでは、判決の確定前後に関係なく、犯人ではない、あるいは犯罪ではないと争っている事件を支援対象とし、運営委員は弁護士や法学、心理学、情報科学、法科学などの専門家で構成され、多角的な視点から検討を加えています。
「えん罪救済センター」の副代表を務める法学部 笹倉香奈教授は、「活動開始から2カ月半、すでに多くの支援の申し込みがあった。資金などの課題もあり、冤罪を訴える事件の全てを支援することはできないかもしれない。しかし、米国のイノセンス運動と同じように、まずは限定的に活動を始め、いつか日本の刑事司法に大きな変革をもたらす日が来ればと思う。」と語っています。