
10月21日(水)、南あわじ市 若人の広場公園において、厚生労働省・文部科学省・日本遺族会の後援による終戦75年全国戦没学徒追悼式が開催されました。
この式典は、先の大戦において学徒出陣や学徒勤労のため動員され、戦死した20万人余の御霊を追悼し、改めて世界の恒久平和を祈念し、大戦の記憶を風化させることなく次世代へ承継するために、兵庫県が中心となって挙行されたものです。
式典には本学中井学長のほか約400名が参列し、井戸兵庫県知事、厚生労働大臣、学徒出陣経験者に続き、本学自治会中央委員会の上田省吾さん(知能情報学部3年次)が若者世代の代表として追悼の辞を述べました。上田さんは「戦争の体験と追悼の祈りを次の世代へ伝えなくてはならない。」と語っています。
上田さんが述べた追悼の辞をここに掲載いたします。平和とは何かを考えるきっかけにしていただければ幸いです。
甲南大学知能情報学部3年次の上田省吾です。若者の代表として追悼の辞を述べさせていただきます。
現在の日本は、学業に励むことも、趣味を楽しむことも、どのような生活を営むのも自由であり、また欲しいものはすぐに手に入るほど満ち溢れています。しかし、過去には米や砂糖といった、生活に必要な物資でも、容易に手にすることができなかった時代がありました。それが戦争です。
私たち自身、戦争とは教科書の中で取り上げられている過去の話、という認識です。そのため、その当時にどのような生活を送り、皆がどのような思いで日々を過ごしていたかを説明できる若者は、残念ながらあまり多くはいないと感じます。私も、戦争を語ることができない若者のうちの一人です。戦争に関しては教科書に書いてあること、どこで戦いが起き、結果として何人の方がお亡くなりになり、どれだけの被害が出たかを、文字や写真で認識できるぐらいの知識しかありません。
そこで私は、今自分たちの世代が何をすべきか考えてみました。
まず、戦争を「学徒出陣」や「学童疎開」という形で体験した方々、様々な形で体験された方々から話をお伺いし、理解したうえで次の世代に伝えていくべきであると考えました。
戦争が終わってから今年で75年。戦争を体験した世代の方々は年々減っていき、将来語り継ぐことすらできなくなる日が訪れるかもしれません。私たちには、あまり多くの時間は残されていません。このため、将来に向けて準備をすることこそが、今なすべきことであると。
また、話をお伺いすると同時に、戦場で、あるいは空襲などによって亡くなられた方々に対しての追悼の祈りを忘れてはならない、と感じます。
祈ることで、戦争というものそのものを忘れないように、また二度と同じ過ちを犯さないようにすること。
これこそが、今、私たちのような若い世代が取り組んでいくべき課題であると思います。
このように、戦争が終わって75年という今年は、過去を見て未来を見据え、何をするべきかを考える機会に恵まれている年であると思います。
私たちが歩んでいる歴史は、戦争の犠牲となった尊い命の先にできた道の上です。戦争を体験した先人たちの思いの先に築かれたものです。このことを自分たち自身がよく知り、理解したうえで、後世に語り継いでいかねばならないと思います。
過去の日本のためにも、今の日本のためにも、決して自分たちの力のみで生きていると驕ってはいけない。
以上、若者代表の追悼の辞とさせていただきます。
甲南大学知能情報学部知能情報学科3年次
上田省吾
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