2020年度は大学の日常が大きく変化しました。
甲南大学でも2020年度の前期は講義が一斉にオンラインに切り変わりました。後期には対面での講義に移行でき、大学にも活気が戻りました。一部にはオンラインの講義も残りましたので、学内にいる学生の数は平常時よりも少ない状況でした。それでもやはり、大学のキャンパスは学生さんがいてこそ、いのちを吹き込まれるのだと実感した1年でもありました。
さて、法学部の刑事訴訟法ゼミでは例年、後期に模擬裁判の上演に向けた取り組みをしています。
4つの班に分かれ、「事案班」が実際の事件などをベースにゼロから事案を作って証拠を作成し、「検察官班」と「弁護人班」がそれをベースに訴訟を組み立て、「裁判官班」が公判を進行して判決を言い渡します。もう10年以上も学生主体で毎年繰り返されてきたイベントですが、今年は開催できるかが危ぶまれました。
9月には対面でのゼミが再開しました。ゼミ生で話し合った結果、今年も模擬裁判を実施したいという思いが強く、実現に向けた取り組みを始めることができました。
例年であれば、後期の期間中は1ヶ月に1回は合宿をして集中的に細かい点をすりあわせ、毎日夜9時まで大学に残って練習を重ねます。本番は一般の方にも公開し、ゼミのOB・OGが全国から駆けつけます。70~80人もの人が本番を傍聴し、その後はOB・OG会をして世代を超えた交流をするという一大イベントのはずでした。
しかし、今年は講義のために毎日大学に来るという生活が一変し、直接顔を合わせることができるのは週1回のゼミの日のみ。合宿もできませんでした。大学に残って作業をしても、その後みんなで食事に行くこともできません。
そのような中、ZOOMやLINE通話などを活用し、時には深夜まで議論をしながら、準備を進めました。時には感情が高ぶって言い合うこともありました。何度も涙を流し、それでも最終的にはゼミ全員がひとつになって、25人全員で本番の日(2021年1月20日(水))を迎えることができました。
(後編につづく)
【ゼミの風景】寒くなってからは教室に移りましたが、感染を防止するため、12月までは大学のグラウンドで、青空のもとゼミをしました。
[法学部教授・笹倉香奈]