神戸には、150年前に設立され現在も続くスポーツクラブがあるのを知っていますか？ JR三ノ宮駅から歩いて7〜8分、磯上公園の一角に神戸リガッタ・アンド・アスレチック倶楽部^※（Kobe Regatta and Athletic Club、以下KR&AC、http://www.krac.org）があります。KR&ACは、1870（明治3）年9月23日、神戸の居留地で活動していた薬剤師アレキサンダー・キャメロン・シムを中心とするイギリス人達によって設立されました。外国人会員専用クラブ^※※であったことから、一般の人にはあまり馴染みのない建物かもしれませんが、KR&ACは現在も活動を継続する、2020年には設立150年を迎えるスポーツクラブです。

＜東遊園地内のA・C・シムの像（筆者撮影）＞

＜KR&AC（筆者撮影）＞

　1868年の神戸開港に伴い、多くの外国人達が来日しました。そして、KR&ACが設立されたことで、組織的にスポーツ活動が行われるようになりました。その活動は、ボートレース、クリケット、陸上競技、テニス、ゴルフ、フットボール、ラグビー、水泳、ヨット、野球など多様なものでした。また、KR&ACは日本人学生との交流も盛んに行いました。それは単に欧米発祥のスポーツを体験させるだ けでなく、スポーツ活動を通した交流により近代スポーツの持つ文化的要素を経験させるものでした。こうした経験は、神戸のスポーツ文化を創る上で大きな影響を与えてきました。神戸は「近代スポーツさきがけの地」として、現在もいくつかの名残を留めています。KR&ACはその代表と言えるでしょう。

^※クラブの名称は「神戸リガッタ・アンド・アスレチック倶楽部」とされているが、「神戸レガッタ・アンド・アスレチック倶楽部」と表記される場合もある。

^※※現在は日本人会員も多く所属している。現会長は創設以来初の日本人。

（スポーツ・健康科学教育研究センター所長/共通教育センター　鵤木千加子）