2020東京オリンピック雑感
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
1. 我々に課せられた課題と責任

　
　2020東京オリンピックは、世界的なコロナパンデミックで1年延期され、2021年７月23日～8月8日に開催されました。
　コロナパンデミックが今なお拡大している中で、開催の是非のみならずオリンピックの意義も大きく問われことになりました。またスポーツに対する世間の目も厳しさが感じられる様にもなりました。様々な意見や問題が噴出する中で、むしろ政治主導の形で2020東京オリンピックが開催される運びになりました。
　しかしオリンピックが始まると従来のオリンピック同様、選手たちの活躍で大いに盛り上がりを見せました。
　コロナパンデミックにより１年延期され、なお開催されるか否か不安視される中で、選手たちは数多くの試練や不安を克服しながらあの大舞台に立ったことと思います。その苦しみの中で養った力を存分に発揮させようとする純粋な姿は、見る者を魅了させるには十分なものでした。
　選手たちの活躍は、この閉塞感が漂う今の社会に夢と希望、そして多くの感動を与えてくれました。また随所に「相手を思いやる心」「国境や言葉を超えた友情や連帯の素晴らしさ」等、勝敗を超えて人間として大切なものを体現している姿を見せてくれました。多くの国民は、選手の皆さんに心から祝福の拍手を送り、感謝と敬意を表しているのではないかと思います。
　特に柔道のオリンピック二連覇を果たした大野将平選手が決勝終了直後のインタビューの中で話した言葉が、強く私の心を打ちました。それはすべての選手たちの気持ちを代弁していた様にも私には聞こえました。
「今日は、今までの苦しい日々を凝縮した様な一日でした。」「オリンピック開催に色々な意見があることは理解しています。」「我々の姿を見て、何かを感じていただければ幸いです。」「この様な中で、開催していただいて、本当にありがとうございます。支援していただいた方々に感謝致します。」
　まさしく「人間的な成長無くして、競技力の向上はなし」を体現している様に思いました。

　今回のオリンピックではスポーツに携わる全ての者に、大きな課題と責任が課せられた様に思います。

　今回のオリンピック開催の陰で、世界の多くの方々がコロナパンデミックで厳しい状況下にあります。また今尚、世界各地では、戦争、紛争、飢餓、自然災害等で苦しんでいる多くの方々がいることを、我々は決して忘れてはなりません。
　オリンピックの開催は、世界の人々の幸せや喜び、また社会の平和、発展、さらには団結、友好親善に繋がることを多くの人が願っています。今回の体験を通して、今一度その原点を見直す必要があります。
　オリンピック選手たちが、大会を通して人間的成長を果たした様に、我々も人として成長し、社会や周りの人たちのために貢献しなければなりません。今までスポーツに恩恵を受けてきた我々に課せられた責任と課題は、大きいと思います。

　今回の経験を通して、正しいスポーツやオリンピックのあるべき姿を追求し、それに向けて努力し実践する中で、2020東京オリンピック開催の意義が見えてくる様にも思います。

2. 兵庫県立武道館（姫路）での2020東京オリンピック・フランス柔道チームの事前合宿

　
　2020東京オリンピック・フランス柔道チームは、姫路で事前合宿を行い、オリンピック本番に向かいました。大会では、日本選手団男女合わせて金9個の大活躍が目立ちましたが、そんな中、フランス選手団も金２、銀３、銅３のメダルを獲得しました。中でも圧巻だったのは、柔道競技最終日の混合団体の試合です。決勝で激闘の末、日本に勝って優勝を果たし世界にフランス柔道の強さを大きくアピールしました。日本発祥の柔道が、広く世界に普及・発展し、強化されている現実を目の当たりにした瞬間でした。フランスチームを温かく迎え入れた姫路の人達にとっては、日本が敗れたことの驚きと共に、フランスの勝利を大いに喜んだことでしょう。
　今回の事前合宿中には、コロナ感染防止のため予定していたフランスチームと市民との交流は、ほとんど実現できませんでした。
　私自身、姫路での事前合宿の締結では、今までのフランス柔道との長い交流の経験や旧知のフランスの親友の存在から、微力ながら皆さんと一緒に日仏間の調整をさせていただきました。
　将来、姫路での事前合宿を通して、日仏交流や友好親善がより促進されることを心より願っております。

（スポーツ・健康科学教育研究センター / 共通教育センター　山崎　俊輔）