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2021/10/04
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【スポ健リレーコラム】[第3回]
2020(2021)TOKYOオリンピック・サッカー競技について

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2020(2021)TOKYOオリンピック・サッカー競技について

 

 2020(2021)TOKYOオリンピック・パラリンピックでは、選手達の頑張る姿にたくさんの感動をいただきました。ここでは私の研究分野であるサッカー競技についてお話したいと思います。

 

 オリンピックにおけるサッカー競技には23歳以下(1年延期した関係で今回は24歳以下)という年齢制限があり、今回はオーバーエイジ枠で吉田選手、酒井選手、遠藤選手の3名が出場していました。この年齢制限はどのような経緯でできたか皆さんはご存知でしょうか。

 

 サッカーの歴史をたどりますとサッカーの国際トーナメントは、当初オリンピックで世界最高峰を競っていたのですが、その後W杯が開催されるようになり、アマチュアしか出場できないオリンピックのサッカーは権威を失いました。その後、事実上のプロ選手を集めたナショナルチームがオリンピックで活躍するようになるとIOCは形ばかりのアマチュア主義を断念し、年齢制限を加えてプロ選手の参加を認めることになり、現在に至っています。そしてW杯は、国際サッカー連盟が主催する男子ナショナルチームによるサッカーの世界選手権大会であり、サッカーの大会の世界最高峰と位置づけられました。また、昨今ヨーロッパチャンピオンズリーグなどでは、世界各国から優秀な選手を集めた欧州のチームが多数参加してハイレベルな試合を展開し、とても人気を博しています。

 

 ところで今回のオリンピック代表や9月開催のW杯最終予選に出場したフル代表にはクラブチーム出身選手以外に、中体連・高体連や大学サッカー出身のサッカー選手がたくさんいることを皆さんはご存知でしょうか。

 

 欧米などサッカーの盛んな国では、子供達はクラブチームでプレーします。そして多くの場合、実力のある選手はそのクラブで育てられ、トップチームへと昇格しプロ契約をしてプロとして活躍するようになります。海外では多くの場合、学校の部活動ではプレーしません。日本では、Jリーグが誕生して以降、Jリーグ所属チームの下部組織以外にもクラブチームがどんどん増えて活動するようになりました。しかし、現在でもサッカーを含む日本の多くのスポーツを大なり小なり支えているのは、学校の課外活動であることは間違いのない事実だと思います。世界では珍しい、そして世界に誇れる日本のスポーツ選手育成システムです。サッカーの場合、エリート選手は、高校卒業と同時にJリーグに入団し活躍することも可能かもしれませんが、日本の18歳はまだまだ伸びしろがあり心身の成長や色々な面で発展途上の選手が多く、大学サッカー経由でしっかり鍛え上げてから再度Jリーグにチャレンジする流れが明確に確立されています。サッカー界では2019年まではユニバーシアード大会(2年毎に開催。大学生年代のオリンピックのような大会)に全日本学生選抜をユニバーシアード代表として派遣しており、代表候補の大学生を招集し日韓戦や海外遠征を通して強化する2年間の一連の流れが出来上がっていました。そしてユニバーシアード代表の選手たちの多くは、その後Jリーグへと進みました。今回のオリンピック代表やフル代表のメンバー(守田選手、上田選手、三苫選手、旗手選手etc.)を見るとその成果が現れていると実感しています。また、サッカー以外でも日本のオリンピアンの約2/3が大学生と大卒者が占めているというデータもあり、ある意味大学は人材の宝庫と言えるのではないでしょうか。

 

 大学スポーツは多くの種目でアマチュアスポーツの最高峰に位置しているまたは位置するべきだと、私は機会があればお話ししています。「日本代表」や「国境を越えて国際大会に出場」することは、実は皆さんが想像するより近くにあると思います。それに気づいていないだけではないでしょうか。甲南大学の課外活動で頑張っている皆さん、アマチュア最高峰のステージで是非、更に上のレベルを目指して取り組んでください。スポーツをしていない皆さんも今回のオリンピック・パラリンピック観戦の時のように、上を目指して頑張る友人たちを暖かく見守り応援してあげてください。

日本のスポーツ、甲南大学のスポーツがより一層盛んになることを心より祈っています。

2017台北ユニバーシアード大会金メダル獲得
チームリーダーとして参加した2017台北ユニバーシアード大会金メダル獲得(守田選手、三苫選手、旗手選手らと共に)

 

(スポーツ・健康科学教育研究センター / 共通教育センター 桂 豊)

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