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2023/04/01
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【スポ健リレーコラム】[第21回]
真面目に、楽しく、長続き

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 今日、「生涯スポーツ」に注目が集まっています。日本において生涯スポーツという言葉が定着し始めたのは1988年ごろといわれています。同年には旧文部省内に生涯スポーツ課が設置されただけでなく、通称全国スポレク祭も開催されました。当初、生涯スポーツと呼ばれている活動は、レクレーショナルスポーツ的な意味合いが強い形で発足してきたものと考えられます。しかしながら今日では、レクレーショナルスポーツの範疇に留まらず、マスターズ競技会に代表される達成スポーツや健康の保持増進を目的としたフィットネススポーツも愛好されており、生涯スポーツの多様化が進んでいます。

 

 私は現在、生涯スポーツとして「体操競技」を行なっています。中学入学時に体操部に入部したのがきっかけです。当時は、技の練習の仕方が分からなかっただけでなく、スポーツ全般が苦手だったこともあり、技を覚えるのに相当な時間を要しました。私は現在、達成スポーツとして体操競技を愛好しています。そのため、現在の自分なりにベストのパフォーマンスを更新すること、競技会での良い演技を目標としていますが、年齢を重ねるごとに体の動きは、悪くなる一方です。しかしながら、動きが悪くなってきながらも、若い頃には体感できなかった動く感じ(動感)と出会うことがあります。鉄棒のバーのしなりをはじめとした器具の沈み・反発などです。身体が動かなくなってきたが故に、「器具の性能を上手く使って動く」ということに気づけるようになりました。

 

 今よりも若くて身体がよく動いた時期においては、「自分の身体をどのように動かすか」ということに関しては、強く意識していました。しかし、「器具の反発を上手く使う」ことに関しては、今一つ無関心だったような気がしています。「もっと早く、この感じに気づいていたら・・」と思うばかりですが、この後悔は、指導者の立場で、若い選手への指導の糧として活かしたいと思います。

 

 自分が使用する「器具・道具の性能を活かす」、ということに関しては、体操競技だけでなく、スキーでも体感できるようになりました。スキーに関してはまだまだ道具と一体になりきれませんが毎年、少しずつ板と仲良くなれてきている気がしています。体操競技とスキー、全く異なるスポーツですが、「器具・道具の性能を活かす」ということに関しては共通性を感じています。

 

 長年に渡ってスポーツを行なっていると、ふと「新たな気づき」が生まれることがあります。この気づきは私個人の体験ではありますが、教員としては、「この楽しさやワクワク感を、他者と共有したい」と思っています。2023年度から科目名称が変更された「スポーツ運動学」(旧 スポーツと身体知)では、運動を行っている時の意識体験に注目した立場(現象学的立場)から、このテーマに向かっていきます。また、生涯スポーツ論では、生涯スポーツの定義に関する検討に始まり、長きに渡ってスポーツを楽しむための仕方について追求します。

 

 どのような目的であれ、スポーツとは、真面目に楽しむ活動です。楽しいから長く続けられるし、真面目にやるから楽しいのです。ここで述べている「楽しさ」とは、私は「技能と向き合う」、強いていえば「動感と向き合う」楽しさだと思っています。2023年度もまた新たな動感との出会いを求めて、生涯スポーツを楽しみたいと思います。

スポーツ・健康科学教育研究センター/全学共通教育センター 吉本 忠弘

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