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2024/02/01
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【スポ健リレーコラム】[第31回]
Japan’s Way

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 1月21日(日)、甲南大学142講義室におきまして兵庫県サッカー協会技術委員会指導者養成部主催の「17th THE FOOTBALL CONFERENCE HYOGO2024」が県内の指導者約220名を集め開催されました。このカンファレンスは、毎年この時期にJFA(日本サッカー協会)関係者等を兵庫県にお招きし、開催しているカンファレンスです。今回は、JFAユース育成ダイレクター影山雅永氏を講師に「世界基準と選手育成」、「Japan’s Wayの方向性と育成 〜世界一サッカーで幸せな国になる〜」という興味深い内容で基調講演をしていただきました。

 この講演の中で何度も「Japan’s Way」という言葉が出てきました。この言葉はJFAの指導者養成事業に関わっていると馴染みの深い言葉なのですが、ここで是非みなさんにこの言葉が使われるようになった経緯をご紹介したいと思います。

 以前、日本代表監督であった旧ユーゴスラビア出身のイビチャ・オシム監督(以下オシム氏)は、代表の活動を通して、日本のメディアのサッカー(スポーツ)に対する反応の仕方・取り上げ方を問題視していました。例えば「勝てば官軍」ではなく、勝利しても「もっとこう戦うべきだったのではないか」、「選手起用は正しかったのか?」など批判、負けようものならさらに「この監督では予選は戦えない。交代すべき」など選手や監督を痛烈に批判し、JFA関係者や現場のスタッフや選手、サポーターに与えるマイナスの影響は計り知れないものがありました。前回のW杯予選で日本代表が連敗した時に、森保監督を交代させろといった大きな波紋が日本国内に起こったことはみなさんも記憶に新しいと思います。当時、自分達自身の行動に不安を感じたり、自信を失いかけたりしていた日本サッカーの中で、「日本のサッカーは素晴らしい」、「日本人の特徴(良さ)をもっと発揮できるように努力するべきだ」と、日本人ではないオシム氏はこの言葉を使って日本サッカーを勇気づけてくれました。

 JFAは当時ドイツやイングランドなどのサッカー先進国をお手本にしたり、FCバルセロナやスペインのサッカーが体格的にも日本人に向いていると思えば提携を結び積極的に取り入れようとしてきました。世界各国で行われているサッカーは、その国の歴史や風土、選手の体格をはじめとするフィジカル面、気質、そして根付いているサッカー(スポーツ)文化により脈々と受け継がれ築き上げられてきたものです。「隣の芝生は青い」とばかり青く見える強豪国の芝生を日本サッカーという庭に持ってきて植えるのは本当に正しいのかということを、オシム氏は強く示唆してくれていたのではないでしょうか。

 オシム氏により「Japan’s Way」が提唱された後、日本サッカーの中で「あの国のサッカーが日本人には向いている」とか「体格が日本人と同じようなあの国のサッカーが良い」などという表現は使われなくなったように感じます。現在日本代表の選手達の多くは、ヨーロッパをはじめとする海外のリーグで世界のトップレベルのサッカーを身を持って体験しながらも、日本サッカーに自信を持って戦っているようにも見えます。

 さて、国の周囲を海で囲まれている日本では私達の日常生活にも欧米など海外からたくさんの文化、情報が輸入され、様々な影響を受けています。単なる欧米化ではなく、諸外国の文化、情報などを参考にしながら日本の良さを大切にした単なるガラパゴス化とは異なる日本独自の文化を築き上げていくという姿勢はとても大切ではと感じたカンファレンスでした。

 最後になりますが、日本サッカー協会では2050年までに日本でW杯を開催し、そして優勝するという大きな夢を掲げ、サッカー界はこれを実現させようと日々努力しています。

 日本サッカー、そして日本代表を応援しましょう。

 

スポーツ・健康科学教育研究センター/全学共通教育センター 桂 豊

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