
2024年5月17日〜25日の9日間、第11回世界パラ陸上競技選手権大会が神戸市で開催された。会場は神戸総合運動公園ユニバー記念競技場、単一のパラスポーツイベントとしては世界最大の大会で、東アジアでは初となる開催であった。
神戸大会での実施は171種目(男子93、女子77、混合1)。パラ陸上は肢体不自由、視覚障がい、知的障がいが対象で、障がいの種類や程度により「クラス分け」され競技が行われる。近年の競技レベルの向上は目覚ましく、ここ3大会で世界新記録が100以上誕生している。
※ 大会情報:https://kobe2022wpac.org
会場となった神戸総合運動公園ユニバー記念競技場
ところで、兵庫県には、先駆的に障がい者のスポーツに取り組んできた歴史があるのを知っているだろうか。その歴史の一つとして重ねられた世界パラ陸上を契機に、障がいの有無にかかわらず、全ての人がスポーツに親しみ取り組む環境がより充実することを願っている。
―兵庫県における障がい者のスポーツに関する主な出来事の紹介 ―
1933年 兵庫県で「第1回京阪神聾唖陸上大会」開催
聾唖者によるスポーツ大会は昭和初期から各競技種目の大会が個々に開催されていた。しかし、その他の身体に障がいを持つ人とスポーツの関係は、昭和30年代中頃までほとんどみられなかった。
1968年 「兵庫県立玉津福祉センター・リハビリテーションセンター」建設開始
県政百年を記念して建設が始まり、1970年10月に完成。肢体不自由者を対象に社会復帰のために障がい者スポーツが導入された。※1969年10月には一部の業務開始。
1975年 「障害者スポーツ交流館」設立
体育館竣工記念として第1回のじぎく杯争奪車いすバスケットボール大会を実施。様々なスポーツ活動が開始され、車いすバスケットボール、アーチェリー、卓球などの大会を開催。同時に初心者スポーツ教室を始め、定期的利用クラブ員として定着させるために、アーチェリー、卓球、バドミントン等で「月例会」を開催し、障がい者スポーツの振興に貢献。
1989年 「フェスピック大会神戸」開催
フェスピック大会(FESPIC Games)とは、アジアパラ競技大会の前身で極東・南太平洋身体障がい者スポーツ大会のことである。会場は、今回の世界パラ陸上大会と同じ神戸総合運動公園ユニバー記念競技場。フェスピック大会は、欧米に比べて障がい者アスリートの競技機会が限られていたアジア・太平洋地域において、中心的な地域別国際総合競技大会として機能した。
2006年 「のじぎく兵庫大会」開催、「ふれあいスポーツ交流館」開館
1964年、東京オリンピックに続き「国際ストーク・マンデビル大会(脊髄損傷者による車イス競技のみ)」と「身体障害者スポーツ大会(一般身体障がい者)」が開催。1965年には(財)日本身体者スポーツ協会が設立され、同年、国体開催地である岐阜県にて第1回全国身体障害者スポーツ大会が開催され、以降毎年国体開催地で行われることになった。2006年、第6回大会全国障害者スポーツ大会である「のじぎく兵庫大会」が兵庫県で開催。県では、大会開催に備えて選手の育成、すそ野拡大のため各種の障がい者スポーツ大会の開催、スポーツ指導員の養成、ボランティアの育成などに取り組んだ。また、総合リハビリテーションセンタ一ブランチとして「ふれあいスポーツ交流館」が開館。震災復興への支援の感謝を伝えるとともに、「共に生きる」喜びと心の豊かさを実感できる県民総参加による大会として、ユニバーサル社会を進める一歩としての役割が期待された。
参考文献:兵庫県150周年記念 兵庫県史〜この50年の歩み〜 第1〜4巻(障害スポーツ執筆:鵤木千加子)
(スポーツ・健康科学教育研究センター/全学共通教育センター 鵤木千加子)