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2024/07/01
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【スポ健リレーコラム】[第36回]
2024年7月パリ・オリンピック開幕
〜 大学生とオリンピック そして大学スポーツ 〜

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 2024年7月、フランスはパリで第33回オリンピック競技大会がいよいよ開幕します。世界各地でオリンピック種目の予選が行われ、出場を目指して日本の選手達も頑張っています。開幕がとても楽しみになってきました。

 皆さんはオリンピアンのおよそ半数以上を大学生や大学出身者が占めていることをご存知でしょうか。以前のコラムでも筆者が紹介したように記憶していますが、「日本のアマチュアスポーツの最高峰は大学スポーツである」ということについて、オリンピック開幕が近づいてきている今、その背景などあらためて紹介したいと思います。

 近代スポーツは明治初期、ヨーロッパやアメリカから日本に導入されました。一部の大学がその受け皿の中心となり軍隊とともに普及、発展させていきました。戦前の高等教育機関への進学率は1%に満たなかったそうで、初めて日本が参加した1912年ストックホルム大会では出場者における大学出身者(大学在校生、出身者)の割合は100%でした。当時は限られた環境の若者達だけが大学に進学しスポーツをすることができ、その結果大学スポーツが日本のスポーツの中心となり盛えていったのです。この当時企業スポーツはまだ盛んではなく、日本のスポーツ界では大学スポーツが中心でした。戦後敗戦国であった日本はスポーツを通しても復興を目指し、高度経済成長とも重なり企業も広告媒体そして地域貢献としてスポーツに力を入れ始め、多くの種目で日本のアマチュアのトップリーグである「日本リーグ」を創設、日本のスポーツの中心的存在が企業スポーツへと移行し、オリンピアンに大学生の占める割合は減少していきました。

 一方、1964年東京大会では多くの外国人選手が日本を訪れることになり、近隣の大学が彼らの練習場所としてグラウンド、プール、体育館等の施設を整え提供したこともきっかけとなり、大学のスポーツ施設は充実していきました。その後大学でも広報の手段・戦略として優秀な選手達をスポーツ推薦入試やAO入試等で迎え入れるようになり、大学スポーツに日本のトップレベルの選手たちが再び増えてきました。

 ここでサッカー界のプロ選手になるための「10年ルール。1万時間の法則」について紹介します。プロ選手になるために10年間計1万時間を費やす必要がある、或いはプロ選手の多くはこれくらいの時間、努力をしているという興味深い研究報告です。日本では、小学校低学年頃からスポーツを始め、中学、高校そして大学と長い期間スポーツを続けている場合も多く、このサッカー界における法則にも頷ける部分があるのではないでしょうか。日本独自の選手育成システムである部活動の最終段階が大学スポーツということもあり、前述したようにスポーツをする環境が整い、長い期間部活動やクラブチームでの活動を続けたトップレベルの優秀な選手達が集まり、日本の大学スポーツがアマチュアスポーツの最高峰としてその地位が築かれてきたのです。

 日本のスポーツは多くの競技種目で学校の部活動を中心に発展してきた歴史があり、日本独自の世界に誇れる育成システムであることは言うまでもありません。日本スポーツ協会では、スポーツとは、「スポーツをする」ことはもちろん、テレビや会場で「試合を見て応援する」こと、そしてボランティアなどとして「試合の運営を支える」こともスポーツの楽しさであると表現しています。今一度、大学でスポーツを「する」・「みる」・「ささえる」ことを再認識し、その楽しさ、魅力、持っているエネルギー等を感じながら、7月から開催されるパリ・オリンピックで多くの大学生・大学出身の日本代表選手が活躍する姿に注目し、応援しましょう。

 

 

(参考文献:「大学スポーツとオリンピック」向井正剛著 「大学とオリンピック」小林哲夫著) 

 

2024パリ・オリンピックに新たに加わる種目(日本オリンピック委員会H Pより)

 

スポーツ・健康科学教育研究センター/全学共通教育センター 桂 豊

 

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