
『養生訓』という本をご存じでしょうか?江戸時代(正徳2年(1712年))に福岡藩の儒学者、貝原益軒によって書かれた、養生についての指南書です。
『養生訓』は第1巻から第8巻まであり、食養生だけでなく、今でいう口腔ケアや、ストレッチング、住環境を整えることまで、健康の維持・管理のための様々な方法が書かれています。今から300年以上も前に書かれた書物ですが、現代を生きる私たちにも参考になる多くの記述がありますので、いくつか紹介します。わかりやすいので原文のままとします。
◇身体は日々少づつ労動すべし。久しく安坐すべからず。毎日飯後に、必ず庭圃の内数百足しづかに歩行すべし。雨中には室屋の内を、幾度も徐行すべし。此如く日々朝晩(ちょうばん)運動すれば、針・灸を用ひずして、飲食・気血の滞なくして病なし。
⇒運動の勧め
◇呼吸は人の鼻よりつねに出入る息也。呼は出る息也。内気をはく也。吸は入る息なり。外気をすふ也。呼吸は人の生気也。(中略)時々鼻より外気を多く吸入べし。吸入ところの気、腹中に多くたまりたるとき、口中より少づつしづかに吐き出すべし。あらく早くはき出すべからず。是ふるくけがれたる気をはき出して、新しき清き気を吸入る也。
⇒鼻呼吸の勧め
◇牙歯(がし)をみがき、目を洗ふ法、朝ごとに、まづ熱湯にて目を洗ひあたため、鼻中をきよめ、次に温湯にて口をすゝぎ、昨日よりの牙歯の滞を吐すて、ほしてかは(わ)ける塩を用ひて、上下の牙歯(がし)と、はぐきをすりみがき、温湯をふくみ、口中をすゝぐ事ニ三十度、其間に、まづ別の碗に、温湯を、あら布の小篩を以てこして入れ置、次に手と面をあらひ、おはりて、口にふくめる塩湯を、右のあら布の小ぶるひにはき出し、こして碗に入、其塩湯を以目を洗ふ事、左右各十五度、其後べちに入置きたる碗の湯にて、目を洗ひ、口をすすぐべし。
⇒しっかり口腔ケア
◇外境いさぎよければ、中心も亦是にふれて清くなる。外より内を養ふ理あり。故に居室は常に塵埃をはらひ、前庭も家僕に命じて、日々いさぎよく掃はしむべし。みづからも時々几上の埃をはらひ、庭に下りて、箒をとりて塵をはらふべし。心をきよくし身をうごかす、皆養生の助なり。
⇒普段過ごす場所を掃除し、整理整頓しましょう
◇凡(そ)一日に一度、わが首(こうべ)より足に至るまで、惣身のこらず、殊につがひの節ある所、悉(ことごと)く人になでさすりおさしむる事、各所十遍ならしむべし。
⇒マッサージをしましょう
導引(今でいうストレッチング)の方法や、マッサージの順番とか具体的な記述もあって、面白いです。また、「医は仁術」という言葉はこの本に書かれています。現代語訳も多数出版されていますので、一度読んでみてください。
(スポーツ・健康科学教育研究センター/全学共通教育センター 水澤 克子)