
このたび、先端生命工学研究所(FIBER)杉本直己所長と建石寿枝助教らの研究グループは、四重らせん構造の一つであるi-モチーフ構造を、生体膜の成分を含む水和イオン液体中で形成させることに成功しました。本研究成果は、英国王立化学会誌「Chemical Communication」に掲載されバックカバーを飾りました。また、4月8日付け日刊工業新聞朝刊でも紹介されました。本研究は、神戸大学大学院システム情報学研究科田中成典先生との共同研究です。
研究グループでは、i―モチーフ構造は通常の生化学実験が行われる水溶(中性)中では不安定で構造を形成できませんが、リン酸二水素型コリンの水和イオン液体中では、安定に構造を形成できることを突き止めました。また、水和イオン液体中では生体内の四重らせん構造の一つのi-モチーフ構造を補強するようにコリンイオンが結合し、構造を安定させていることを明らかにしました。
コリンやコリンの類似体は、神経伝達物質のアセチルコリンや生体膜の主成分であるホスファジルコリンとして、生体内に存在する重要な分子です。また近年の研究で、血中のコリンは心血管疾患や動脈硬化の発症などと相関関係があると報告されています。本研究成果は、今後、疾患の発症の解明や四重らせん構造の形成を抑える薬剤の開発につながる可能性が期待されます。
先端生命工学研究所(FIBER)では、生命化学分野における研究成果を通じて、科学技術の振興と研究成果を通じた社会還元に寄与してまいります。
【用語解説】
1. i-モチーフ構造・四重らせん構造
DNAは基本的に二重らせん構造をつくります。さらに、シトシンおよびグアニンの塩基の連続配列から成る二重鎖はそれぞれのDNA鎖が、i-モチーフ構造およびG-四重鎖とよばれる四重らせん構造もつくることもできます。
<ご参考>
Chemical Communication