図書館・センター・機構

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スポーツ・健康科学教育研究センター

所長挨拶

スポーツ・健康科学教育研究センター所長 曽我部 晋哉

スポーツ・健康科学
教育研究センター所長
曽我部 晋哉

 甲南大学は優れた人材を輩出するために『人格の修養と「健康の増進」を重んじ、個性を尊重し、各人の天賦の才能を引き出す』という教育理念を掲げています。甲南中学が開講したのは今から約100年前の1919年。当時は、スペイン風邪によるパンデミックが世界中で猛威をふるっており、日本でも多くの若者が犠牲になったと記録されています。ゆえに、これから日本の将来を担う若者の「健康の増進」は、何においても重視されたのだと測られます。そして、この教育理念は、現代社会においても色あせることなく、むしろ輝きを放っているように感じます。当センターでは、この理念を基盤とし、今も変わらず健康増進を念頭に様々な調査・取り組みを行っています。将来を担う若者には、健康を基盤とした「人格・天賦の才」を、我が国の活力ある社会の実現に向けて発揮してもらいたいと思います。

 さて、WHOは世界保健機関憲章(1947年)の中で、健康について次のように定義しています。

 "Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity."

 つまり、健康とは身体的なものだけではなく、心も自分を取り巻く社会環境も円滑な状態にあってこそ、真の健康であると言えるのです。これらは、それぞれが影響しながら自らの健康状態の均衡を保っており、逆に考えると何か一つでもバランスが崩れてしまうと、いとも簡単に健康を害してしまいます。だからこそ、我々は健康を維持するために、確固たるエビデンスをもとに起こりうる現象を予防する必要があり、もしバランスを失った場合には、原因や改善策について広く提言しなければならないのです。 

 そのためには、健康状態を横断的(ある時点での状態を比較・分析する)に分析し、縦断的(時間経過とともにその影響を分析する)な視点から新たな知見を見つけ出すことが大切です。例えば、2021年、コロナ禍における学生の健康状態を横断的に調査することによって、身体活動量と心の状態には関連性があることを報告しました(スポーツ・健康科学教育研究センター紀要第24号)。続けて数年に渡り、青年期に地球規模で生じた社会不安による影響を縦断的に追跡し分析したことで、当時の若者の健康に深く寄り添うことが出来ました(同紀要,第25号)。やはり、人生100年時代を迎えた今、ある「一点の健康」だけを見るのではなく、現在の状態は過去からつながり、そして、これからの行動や習慣が将来にもつながるという長期的な視点を持たなければなりません。このように健康を「線の健康」として捉えることは、人生を豊かにする意味でも非常に重要な観点だと思います。

 2020年から数年に及ぶコロナ禍を経験したことで、改めて我々の生命は、自然環境、社会環境の上に成り立っていることを実感し、健康であることの有難みを社会全体が実感したのではないかと思います。当センターでは、健康、つまり体・心・社会がバランスを保ち活気ある世の中になるよう「点と線の健康」をサポートできるよう様々な取り組みと提言をしていきたいと思います。

問い合わせ先

<岡本キャンパス>
〒658-8501神戸市東灘区岡本8-9-1
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